先生が心を揺さぶられた、 不登校の子どもたちによる「お互いへの思いやり」 新形態の公教育「メタバース学校」は、優しさであふれていた
「『自分の作品を見てもらいたい』という思いをずっと胸に秘めていたんだなと、気付かされました」 ▽自尊心高め、家の外へ 実際、メタバース学校に参加する子どもたちは自尊心を取り戻し、積極的になっているようだ。 グロウスでは「オフ会」と称して月に1度、リアルに交流できる場を設けている。11月30日の会合で、参加者に話を聞いてみた。 中学2年の女子生徒は、人が多い場所が怖くて外出が苦手だったという。でも、失敗しても温かい声をかけてくれる先生や仲間とオンライン画面上で触れ合う中で、心境に変化があった。「人への信頼感が高くなったし、こういう場所にも参加できるようになった。自分の積極性もちょっとずつ上がってきています」 別の中学2年の女子生徒は、みんなの前でチャイコフスキーの曲をピアノで演奏。「楽しかった」とうれしそうな表情を見せ、こう語った。「グロウスに入る前は1日にあまり変化がなかったけど、いまは先生やみんなとコミュニケーションができて刺激がある」
小学6年の女子児童は、いろいろな素材を切り貼りして、漫画のキャラクターの絵を制作した。「趣味を見せる人が家族しかいないので、みんなに見てほしかった」 子どもたちに共通していたのが、自分の発表に満足するだけでなく、仲間の発表の感想や感謝を語っていたことだ。 「すごく上手だった」「ダンスの振り付けは全部自分で考えたんだって」「緊張したけど、みんなが手拍子をしてくれた」 「誰かから認められている」という感覚が、家の外に一歩踏み出すことを後押ししていた。 ▽一人一人を見られていなかったという反省 先生たちにとって、担当する全員が不登校というのは初めての経験。試行錯誤の連続だ。例えば、子どもが前日にリアルな学校に登校してグロウスに戻ってきた時、どんな声かけをすれば安心できるのだろうか、不安を訴えられたり、傷ついている様子がうかがえたりする場合、どのように対処すればいいのか―と思いを巡らせている。