「スキルアップ信者」「資格コレクター」の残念な末路
スキルを身に付けることを重視する「スキルアップ信仰」は根深い。資格を取得すればその分、年収は上がるのだろうか。そういう場合もあるが、必ず優遇されると思ったら大間違いだ。※本稿は、石倉秀明『CAREER FIT 仕事のモヤモヤが晴れる適職の思考法』(宝島社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 根深いスキルアップ信仰 世間には、「キャリアはアップしなければならない」という思い込みに付随して、スキルを身につければ人生が変わるという「スキルアップ信仰」のようなものが横たわっているような気がします。 それはほとんどの場合、極端な例でしかありません。 「スキルを身につけたら、それが大成功して、その世界で生きていけるようになりました」というのは、あくまでもほんのひと握りの意見でしょう。 実は、そういう人はもともと、それだけの強みを持っている人だったのではないでしょうか。
例えば、資格の数だけ多くてもその分、年収が上がったというような人はあまり聞かないと思います。 弁護士など難易度が高く、希少性もあり、マーケット的に価値の高い資格であれば別です。けれども、日商簿記2級とか簿記3級の資格を取ったとしても、それを取得したからといって年収アップ、あるいはキャリアアップにつながるかというと、かなり微妙な話です。 もちろん、大手であれば、資格を取れば給与にプラス3000円とか特別手当を出すところもありますので、一概には言えませんが、資格を取れば必ず優遇されると思ったら大間違いです。 けれども、自分のキャリアのことを考えて、まず資格を取りに行くという人はかなりの数にのぼるでしょう。 そうした「資格を取れば優遇される」「資格があれば自分の強みになる」という安易な考え方の背景には、やはりキャリアに対する不安があるからなのかもしれません。 「このまま働いていて、自分の給料は上がっていくのかな」とか、「周りと比べて自分は評価されているのかな」という不安、あるいはもっと自己実現的に「何者かになりたい」という漠然とした不安に突き動かされて、明確な目的もないまま、つい資格取得に走ってしまう。 そういう意味では、どこかこうした資格ビジネスには、人のコンプレックスにつけ込んで展開される部分もあるのかもしれません。
石倉秀明