サプライヤーから不安の声…自動車不正、全国に波紋呼ぶ
銅、高値買い痛手
自動車メーカーの型式指定不正は、自動車部品の加工業者に銅棒などを納めている都内の銅原料問屋にも影響を与えそうだ。高値で買った銅製品の在庫がたまる可能性が出ているためだ。 問屋幹部は「ダイハツや豊田自動織機の生産停止による在庫がはけてきたタイミングで今回のことが起きた。銅価格が上昇して高値で買っているものが多く、一部は赤字も覚悟せざるを得ない」と訴える。 国際指標となるロンドン金属取引所(LME)で銅3カ月先物は3月下旬から上昇し始め、5月20日にはトン当たり1万889ドルと過去最高となった。円安が加わり、国内の銅建値も過去最高の同175万円となった。 6月末に入ってくるのは最高値の時に買ったもの。問屋幹部は「車の生産が止まると加工業者は買ってくれない。高値買いの在庫がたまり我々が抱えることになる。実際には夏ごろに大きな影響が出るだろう」と警戒する。
実情に合った認証制度必要に
不正の背景にある認証制度のあり方を問う声も聞かれる。今回不正のあった企業と取引がある化学メーカー幹部は「認証制度が実情に合っているのか。自動車業界がより良くなるために考えないといけない」とし、材料加工メーカーの幹部は「米国などのように量産後に検査するような仕組みも国際競争力の面からは必要になる」と指摘する。 「世界と比べても日本の規格の厳しさは群を抜いている」(関東のサプライヤー)という認証制度は一方で日本の自動車産業の競争力を磨いている側面がある。その基盤となる認証制度の不正は根幹を揺るがす行為だ。 「16年に三菱自動車が不正を起こし会社がつぶれるかどうかという問題だったのに、結局『他山の石』にはできなかった」(関東のサプライヤー)、「認証制度を軽視していたのだろう。行政機関などに働きかけ制度を実態に合わせていくことが本筋だったはず」(自動車向け接着剤を手がける化学メーカー幹部)と厳しい声も上がる。 トヨタは「自動車メーカーとして絶対にやってはいけないこと」(豊田会長)として法規認証をテーマとした「TPS自主研究会」を実施し改善活動に着手した。ホンダも順法精神向上のための研修や型式指定申請に特化した監査体制の運用を始めた。マツダは「法令に則り、全社で再発防止を徹底する」(毛籠社長)と誓い、現場社員を主役に経営・管理層が現場を支援する企業風土の醸成「ブループリント」に取り組む。風土改革の実現へ、各社が再スタートに向けた準備を始める。