震災に襲われた能登半島、それでも「同人誌」はまた作られた…石川県内唯一の「同人誌印刷所」で起きたこと
「ウチは10人ほどの小さな所帯ですが、この道20年、30年のベテラン職人が多いんです」と真由美さん。「父も仕事に命をかけてきたような人だから。印刷バカなんですよ」
「あの地震がなければ…」
真由美さんは珠洲市内の病院で臨床検査技師をしていたが、2019年に3代目を継ぐ決意をした。「父に『継いでほしい』と言われたことはありません。でも、やっぱりここをなくしたくなかった。不謹慎かもしれませんが、あの地震がなければ、父が積み重ねた信用の厚みを、ここまで肌で感じることはなかったかもしれません」
4月に「地震復興応援ノート」をオリジナルで作った。機械の動作確認を兼ね、被害を免れたコミック紙をとじただけの真っ白なノートだったが、試しにXで通販を告知したところ即日完売。なお注文が殺到したため、7月に第2弾を出した。
「『能登のために何かしたかった。ノートを出してくれてありがとう』と書き添えてくださった方もいました。本当にありがたいです」
真由美さんの考えでは、「自分の思いを100%乗せるもの」が同人誌だ。「その意味で、この白いノートも、私たちの同人誌と言えるのでしょうね」
紅玉さんらは9月25日、同人誌の収益金約76万円を石川県に寄付した。その直前、能登は記録的豪雨で再び大きな被害を受けた。「波の花 風吹く」は、12月1日に東京ビッグサイトで開かれる即売会「文学フリマ東京」で第2版が売られる予定だ。