今こそ「巨人包囲網」…の考え方は時代錯誤なのか?
里崎氏が指摘するように「昭和の時代」には、開幕から他球団は、巨人戦にエースをぶつけるように逆算して”G倒”ローテーを組んだ。エースと新戦力をあえて巨人戦にぶつけて成功した中日の戦い方を他球団も追随すれば、巨人の独走にストップをかけることも可能かもしれない。だが、いかんせん、球団の足並みは揃わず「令和の時代」の野球にもそぐわないという一面もある。 里崎氏が続ける。 「チームによってデッドゾーンが違いますからね。“もう今やらないと間に合わない”と考えている下位のチームがあれば、”まだまだ勝負は9月”と考えているチームもあるでしょう。足並みを揃えるのは難しい。また巨人包囲網を張るためにローテーを動かすリスクもあります。次のカードで反動がきて、結局、巨人に勝ってもトータルで見れば、借金になってしまうというリスクがあるのです」 今季、ここまでの巨人戦を振り返ると”G倒”を意識したローテーを組んでいるのは中日とヤクルトの2球団だけだ。中日の与田監督は、開幕前に「優勝を狙うんですから、当然、昨年リーグ優勝したチームをターゲットにしていかねばならない」と宣言していたが、その言葉通りにエースの大野を3試合先発させた。ヤクルトも”ノーノー”小川を3試合登板させている。だが、阪神が開幕投手の西を巨人戦にぶつけたのは、開幕カードのみ。横浜DeNAもエースの今永、準エース格の平良を巨人戦に登板させたのは7月18、19日の2試合だけ、広島は開幕投手の大瀬良をまだ1試合も巨人戦に登板させていない。すべての球団の足並みが揃っているわけではない。 加えて6連戦を基本とする過密でイレギュラーな今季の日程も影響している。横浜DeNAに至っては、8月は1試合も巨人戦が組まれていない。 「130試合制で中2日の休養日があった昭和の野球では、対巨人用にローテーを動かすことは、さほど難しくなかったかもしれませんが、今年のように6連戦が軸になり、時には9連戦まである過密日程の中で意図的にローテーを動かすことは難しいでしょう。その中で中5日で誰かを回したり、あえてエースを間隔を空けて使ったりすれば、チームにとってリスクの方が大きくなります。分業制が確立し、メジャーのようにシーズンをトータルで考える投手起用が当たり前になっている現代野球において巨人包囲網をやろうとしてもやれないのが現実なのかもしれませんね。ただ今季はトータルで3位でもいいという考え方ではダメなシーズンなのです」 里崎氏の分析が「巨人包囲網」を阻む要因でもあるのだろう。