NAA田村社長、日本人の海外旅行回復「時間かかると思う」卒業旅行で将来需要に
成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)の田村明比古社長は5月30日、コロナ後に急成長しているインバウンド(訪日)需要に対し、伸び悩んでいる日本人のアウトバウンド(出国)需要について、回復に時間が掛かるとの見方を示した。また、海外旅行への関心が若年層で低下していることを危惧し、卒業旅行などをきっかけとして海外旅行需要を長期的に回復させていく施策の必要性を指摘した。 田村社長は、アウトバウンドの回復について「時間がかかると思う」と述べ、円安や現地の物価高に加えて、海外旅行は国内旅行のように需要喚起につながる国の予算が付きにくい点を指摘した。国内旅行は被災地の復興支援につながるなど広範囲に経済効果が期待できる反面、海外旅行は支援策を講じても恩恵を受けるのが旅行業界などに限定されるなど、国としての大掛かりな支援が難しい側面を持っている。 「最近は卒業旅行も減っている。若者が海外に行く機会は作った方が良い」(田村社長)と述べ、「卒業旅行で海外へ行った人は、海外旅行のリピーターになりやすい」と、海外での人的交流や相互理解の促進に加えて、将来的な海外旅行の岩盤層として期待できることから、長期的な視野で海外へ出る若年層を育てていく必要性を指摘した。 円安や物価高による日本人の海外旅行需要の伸び悩みは、航空各社にとっても課題だ。全日本空輸(ANA/NH)などを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の芝田浩二社長は「コロナ前はほぼ半分がアウトバウンドで、訪日は3割しかいなかった。あとは(アジアから日本経由の北米渡航など)3国間流動が13%。いまはアウトバウンドは37%しかない」と回復の遅れを指摘する(関連記事1)。 日本航空(JAL/JL、9201)の斎藤祐二副社長も「出張需要がまだ(コロナ前の)6割を超えるくらいのレベル感」と業務渡航も含め、世界的に見て日本のアウトバウンドの回復遅れが目立つという(関連記事2)。 30日の円相場は1ドル157円台前半で推移するなど、依然として円安傾向が続いている。日本人に人気のハワイなども物価高が続いており、年に一度であれば奮発できたとしても、家族で海外旅行を気軽に楽しむのは多くの人にとって難しい状況といえる。 アウトバウンドの回復が長期化する可能性が高い状況下では、海外旅行離れに歯止めを掛け、将来的な需要創出に注力するのが得策と言えそうだ。
Tadayuki YOSHIKAWA