年間赤字6.5億円!いま、札幌ドームに迫る「2つの危機」…「ライブ開催激減」「コンサドーレ降格ピンチ」
札幌ドームの今後はどうなる
今後の「大和ハウスプレミストドーム」、その運営を担う「株式会社札幌ドーム」には、どのような課題があるのだろうか? コンサート・ライブ開催に関しては、まずは割高な使用料を見直すしかない…が、値下げ要望への対応は、「料金は札幌ドーム条例で決まっている」の一点張り。「条例を変えればよい」という発想に至らないのが、公有公営・第三セクター会社である札幌ドームの、企業としての限界でもあろう。 また、利用の増加には誘致も必要だ。いまの「株式会社札幌ドーム」経営陣は市役所、関連企業の兼任など「いかにも第3セクター会社」な幹部が揃っている。しかしJリーグ・清水エスパルスのように、スタジアムへのコンサート誘致やスポーツビジネスの経験がある山室晋也社長(元・千葉ロッテマリーンズ社長)を招聘するような事例もある。 早く集客施設としての営業力を強化しないと、至近距離のエスコンフィールドが「音楽イベント」「バスケ公式戦」などのイベントを続々と獲得している(いくつかは、札幌ドームが先に営業をかければ獲れたのでは?)。早々に手を打った方が良くないか。 さらに、コンサドーレはドーム安定した使用料をもたらしてくれる貴重な存在だ。まずは、現在の「使用料1/3の実質減免」「一定額の補助」など、現状でのコンサドーレ支援を続けることが、札幌ドーム・コンサドーレ双方の支援に繋がる。なかなか先は見えないが、大口顧客であるファイターズが消えたいま、とにかくコンサドーレを支え続ける以外の選択肢はない。
実はライオンズが移転していたかも?
札幌ドームの不採算問題が露わになったのは最近のことだが、建設当時の経緯を考えると、最初から「プロ野球抜きでは不採算」と見なされていた経緯がある。 札幌ドームの建設が決まった直接の要因は、「2002年・日韓ワールドカップの会場誘致」であった。ただ、昭和末期から議論されていた「ホワイトドーム構想」が北海道拓殖銀行の経営問題や「協和汚職事件」で頓挫していたところに、「プロ野球の誘致、多目的施設化による収益向上」という一押しがあったからこそ、ドーム球場の建設が動き出したのだ。 2001年の開場当時に検討されていたのは、サッカーでの利用に加えて「西武ライオンズ(当時)の準本拠地化」であり、堤義明オーナー(当時)も「主催試合の半分(30試合程度)を札幌で開催したい」など、積極的な発言を繰り返していた。 後からファイターズの完全移転が決まり、札幌ドームは「プロ2チームの本拠地」体制となったのだ。年間70試合弱も試合が開催される完全移転が決まっていなければ、札幌ドームはもっと早い段階で採算性を見直すことになっていただろう。 札幌ドームとファイターズそれぞれの言い分は、早くからに食い違っていた。「ファンサービスのレベルをもう一段、二段上を実現したい」と公言するファイターズ側と、「電球は球切れになるまで大事に使いましょう、という意識が第一」(株式会社札幌ドーム・長沼修社長(当時)2013年10月21日・北海道新聞インタビューより)という札幌ドーム側の意識の違いは、いずれ摩擦を起こしていたと思われる。 ファイターズの移転で失われた事業収入が戻らない今、「大和ハウスプレミストドーム」が打てる戦略は、ほとんどない。せめてコンサドーレとの協業や積極的なコンサート・ライブ・イベント誘致で稼働率を上げ、「儲かってはいないけど頻繁に使われるハコモノ」として生き残る以外、打つ手がないのではないだろうか。 まずは、長期経営計画で「2027年度までの5年間トータルで900万円の黒字」と豪語していた分、どこまで近似値を出せるか…いまの経営陣のお手並みを拝見したい。 赤字に苦しむ「大和ハウスプレミストドーム」(札幌ドーム)は、どう経営を立て直せばいいのか? つづく後編記事『札幌ドームの赤字は本当に「日ハム移転のせい」だったのか…いま不振に陥っている「真の理由」』では、札幌ドームと同様に「公有公営」であった大阪ドームと比較しつつ、その事例を活かせるか検証していこう。
宮武 和多哉(ライター)