企業は借り入れ通じ金融緩和効果を実感、最近の円安は副作用-日銀調査
(ブルームバーグ): 日本経済がデフレに陥ったとされる1990年代後半から続く日本銀行の金融緩和政策について、企業は借入金利の低下や金融機関の融資姿勢の積極化などを通じて効果を実感する一方、最近の円安を副作用と認識している実態が浮かび上がった。金融政策の多角的レビューの一環として行ったアンケート調査結果を日銀が20日に公表した。
国内の非金融法人企業約2500社を対象に実施した調査によると、過去25年間の金融緩和策について9割程度の企業が効果を実感していると回答。具体的(最大三つまで回答可)には、金融機関からの借入金利の低下が73%と最も多く、次いで金融機関の融資姿勢の積極化が43%となるなど、「主に貸し出しチャネルを通じた効果が挙げられた」という。
一方で、7割強の企業が金融緩和の副作用も指摘。具体的な回答は、ばらつきが見られたものの、最多の29%が「為替相場の動向」を挙げた。企業からは「為替円安は、原材料費の増加や外国人労働者の採用難化をもたらした」「短期間の大きな為替変動は、事業計画の策定の支障となった」など最近の円安進行を副作用とする声が多かった。
為替動向に関しては、インバウンド(訪日外国人)の増加や、2013年4月の大規模緩和の導入に伴う過度の円高の是正などを金融緩和の効果と位置付ける企業も13%あった。もっとも、最近の急速な円安を巡っては、企業規模を問わず懸念を示す声が増えており、今回のアンケート結果からも裏付けられた形だ。
また、物価と事業環境に関する設問では、業種・規模を問わず多くの企業が物価と賃金が共に緩やかに上昇する状態の方が、ほとんど変動しない状態よりも事業活動上好ましいと考えていることが分かった。理由として「賃金の増加は家計の消費にプラスだから」「価格転嫁が容易になるから」を特に多く選択している。
アンケート結果を踏まえて日銀では、日本の設備投資や物価・賃金が長期間にわたって停滞した要因について、バブル崩壊やその後のリーマンショックなどの経験によるリスクテイクの抑制や、消費者の低価格志向の強まりなどを指摘。賃金を抑制しても労働者を確保できたため、企業の低価格維持・賃金抑制と消費者の低価格志向の悪循環に陥ったことや、少子高齢化の進行なども挙げている。
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Sumio Ito