名古屋の小倉GM兼監督、電撃解任の裏事情。薄らいだ信頼とフロントの思惑
クラブ史上初となるJ2降格危機に直面している名古屋グランパスが荒療治に踏み切った。ゼネラルマネージャー(GM)を兼任していた小倉隆史監督(43)が休養し、アシスタント・コーチのボスコ・ジュロブスキー氏(54)が残り8試合の指揮を執ることが23日に発表された。 クラブOBでもある小倉氏は昨年11月、低迷していた名古屋の再建を託される形で、指導者経験のないままGM補佐から監督に就任。GMを兼任する異例の船出となったが、第1ステージは14位と低迷。第2ステージもここまで2分け7敗の最下位に沈んでいた。 名古屋が最後に勝利したのは、5月4日の横浜F・マリノス戦までさかのぼる。クラブワースト記録を更新する17戦連続未勝利の泥沼にあえぐ中で実質的に解任された形となるが、未知数の指導手腕に対する不安は就任時から指摘されていただけに、遅きに失した感は否めない。 第1ステージのスタートは上々だった。開幕戦でジュビロ磐田に勝利し、第2節では昨シーズン王者のサンフレッチェ広島とドロー。199cm、93kgの巨漢FWシモビッチの高さ、100mを10秒台で走破する元日本代表FW永井謙佑の速さを前面に押し出す、シンプルなスタイルが奏功していた。 セットプレーとカウンターを徹底すれば、ある程度の結果は残せる。しかし、就任会見で「テクニカル」「共感」「スマートさ」という3つのキーワードをあげたうえで、目指すスタイルを「5人目までが連動するサッカー」に据えていた小倉氏は、シーズン序盤にはこんな言葉を残している。 「目指すべきサッカーがもちろんあります。高さとカウンターだけであとは引いて守る、ということはやりたくありません。ただ、勝たなければいけないのもプロの世界。勝たないと僕、クビを切られちゃうので」 現実的な戦いに徹して結果を残しながら、日々の練習で理想を追い求めていく。このときは「すべてを形にできるほど新米監督の僕には力がないし、まだ時間が足りないということで、選手には迷惑をかけています」と笑いながらかわす余裕があった。 もっとも、いつまでもシンプルなスタイルが通用するほど、J1は甘い世界ではない。シモビッチの高さにはクロスの供給源を断ち、セットプレーのチャンスを与えない守備に徹する。永井のカウンターには走り込むスペースを与えないためにブロックを形成する。 名古屋対策が講じられ、黒星が先行しはじめた中で、目指すスタイルの完成度が問われる状況となる。しかし、笛吹けども踊らない状況に苛立ちを隠せなくなったのか。就任直後から貫いてきた「結果は監督の責任」という姿勢に、大きな変化が表れてくる。