米大統領選 指名争いのヤマ場「スーパーチューズデー」3つのポイント
(1)サンダースが一気に「王手」となるか
その重要な戦いで優位に見られているのがサンダースである。直前の世論調査ではそのカリフォルニア州や、人口では2位(代議員数では3位)のテキサスなどで、サンダースは他の候補を大きくリードしている。 この流れで一気に「王手」を決めることが出来るのかが、まずは今回のスーパーチューズデーの大きなポイントとなる サンダースは自ら「民主社会主義者」だと名乗り、「富裕税」「GAFA解体」「保険国有化」「大学無償化と教育ローン帳消し」など、これまでのアメリカ政治の「常識」を根本から打ちのめすような政策を掲げている。まさに「急進左派」という言葉が当てはまる。アメリカだけでなく、日本でも株式市場関係者などの間で「サンダース大統領となった場合、株式市場はパニック安になる」など「サンダース・リスク」という言説がすでに広く共有されるようになっている。 この批判を打ち消すためにも、スーパーチューズデーでの各州での圧倒的な勝利を重ねたいはずである。「リスクをかけてまでも大きくアメリカが変わらないといけない」と考える層からの支持もさらに厚くなるだろう。
(2)バイデンに「最後の大逆転」の目は残るか
次のポイントは、予備選前までは最有力候補とされてきたバイデンに「最後の逆転」の目が残るかという点だろう。注目の若手、ブティジェッジ、クロブチャーの二人がスーパーチューズデー直前に撤退を表明し、ともにバイデンの演説会に駆けつけ、バイデン支持を表明した。「中道一本化」でバイデンの支持が少しでも伸びれば、スーパーチューズデーでトップに立てなくても「大逆転」も可能となる。 「大逆転」の場は、党としての大統領候補を正式に決める7月の民主党の全国党大会だ。全国党大会で、1回目の投票のときに過半数が取れない場合、予備選段階での各州の結果の縛りがとれ、話し合いによって票を取り合うことになる。このときの状況を「ブローカード・コンベンション(brokered convention)」という。株の「ブローカー(「仲買人」」と同じで、投票先を迷っている代議員に、特定の候補の支援者がその候補の良さをPRし、場合によっては党綱領に盛り込む政策などの「取引」を行うことで、自身が支持する候補への投票を増やしていくのが戦略である。 スーパーチューズデーの各州の世論調査はかなり厳しく、バイデンが1位となる可能性があるのは、アフリカ系からの支持が期待できる南部5州程度というのが現実的な見方である。すでにサンダースが大きくリードしている州が多い分、「中道一本化」で今回のスーパーチューズデーの情勢がどれだけ根本的に変わるかは限定的かもしれない。 それでもバイデンが少しでも得票を増やし、比例配分される代議員を獲得していったとすると、夏の党大会までにサンダースが過半数の代議員を固めることを阻止できる。そもそも「ブローカード・コンベンション」に持ち込めた時に、ブティジェッジ、クロブチャーら「広い中道からの支持」は絶好の切り札にはなる。さらに、今回の規則改訂から1回目の投票に参加させないことになった党のボスたちである特別代議員の771人の票の多くをバイデンは期待できる。 つまり、バイデンは「勝たなくてもサンダースの勢いを止めるくらいの善戦をすればいい」ということになる。 今回のスーパーチューズデーが、バイデンの「大逆転」のきっかけになるかどうかに注目したい。