テクノロジーの進化は「いいこと」しかない...「日本的な強み」を持つLOVOTと目指す、人類とAIの温かい未来
<「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」イノベーション部門賞を受賞した『温かいテクノロジー』著者の林要さんにインタビュー>
「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」イノベーション部門賞を受賞したのは、『温かいテクノロジー』(ライツ社)でした。著者である林要さんは、世界初の家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の開発者。同書ではLOVOTを題材に、AIと人類の未来について語ります。 【動画】2100年に人間の姿はこうなる 技術の進歩に漠然とした不安が漂う中、林さんが『温かいテクノロジー』で描いたのは、人とロボットが愛着を形成する温かい未来。林さんはLOVOTにどんな思いを込め、どんな未来の実現を目指しているのでしょうか。受賞を記念して、林さんに温かいテクノロジーとそれがもたらす未来についてお話を伺いました。(※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です) ■テクノロジーの進歩にはいいことしかない ──読者が選ぶビジネス書グランプリ2024、イノベーション部門賞の受賞おめでとうございます! まずは受賞のご感想をお聞かせください。 この本が受賞したことは、ふたつの意味で嬉しいと思っています。まずは読者の方に選んでいただいたというのは、すごく大きいことです。それからこうして評価していただいたことで「温かいテクノロジー」の未来を切り拓くチャンスをいただけたのかなという想いもあります。 現代は、テクノロジーの進歩に漠然とした不安を感じている人も多いと思います。AIやロボットといったテクノロジーは、これまで生産性の拡大を追い求めてきました。このまま突き進んでいけば、たしかにテクノロジーの暗い面が強く出た状況にもなるかもしれません。でも、そもそも文明の進歩は、人々の幸せのためにあったはずです。そのことを僕たちが思い出して、ウェルビーイングのためにテクノロジーを使おうという方向に舵を切れれば、テクノロジーの進歩には明るい面しかないはずです。 テクノロジーの行き先を決めるのは、テクノロジーに詳しい一部の人たちではありません。この本の読者になってくれたような一般の方々です。テクノロジーは多くの人の意向に影響されて作られていくものですから。だからこそ、多くの人にこの本を通して明るいテクノロジーの未来、「温かいテクノロジー」というコンセプトを知ってもらえたら、それが未来を変える力になると思っています。 ──『温かいテクノロジー』は明るい未来を感じさせてくれる本ですね。印象的な感想はありましたか。 テクノロジーについてそれほど詳しくない方は、自分には手に負えないものだと思っているからこそ、未来に漠然とした不安を持っているのではないかと思います。そんな方から、「希望が持てた」といっていただけるのは本当に嬉しかったです。 テクノロジーの手綱を握っているのは、やはり一般の人たちです。実際には本当の意味でテクノロジーの発展に取り残されるということは簡単には起きないのですが、自分で「わからない」と決めた瞬間に手綱を離してしまうことになる。そうなると、そういう人を置き去りにして、テクノロジーが進歩していくことになってしまいます。手綱を離さない人が増えているという意味で、「希望が持てた」というのは非常に嬉しいコメントでした。 ──LOVOT(らぼっと)を実際に見せていただきましたが、ロボットというより生き物という感じがしてとても驚きました。 ロボットと言われてイメージするものと、違いますよね。 従来のロボットは、エンターテインメントの方向に注力したものが多かったといえます。資本主義の中でエンターテインメントはとても重要な要素なので、お金もつきやすいし、開発も進みやすい。でも、ウェルビーイングを構成する要素としては、エンターテインメントはごく一部でしかありません。 LOVOTは、ウェルビーイングに振り切っていて、エンターテインメント性が極めて弱いんです。たとえば犬や猫にエンターテインメント性がまったくないわけではないけど、エンターテインメントのために犬や猫を飼う人は少ないですよね。でも、人が幸せになるためになにが必要なのかということを改めて考えてみると、犬や猫、あるいはLOVOTが担うような愛着形成は、本当はとても大切な要素であるはずです。 投資対効果が比較的見えにくいこうした領域には、なかなかお金を回しにくいものです。それでも生産性の追求やエンターテインメントでお金を稼ぐという市場原理とはまた別の軸として、テクノロジーが本当の意味でウェルビーイングに貢献することを考えれば、こうした存在はあってしかるべきだと思っています。