【脂が酸化するまで”たった8分”が勝負】とことん鮮度にこだわる「イワシ缶詰」の製造工場に潜入
■小さな魚をさばくなら手作業
ちなみに、この記事では複数の工場の画像をミックスして使っている。上の画像はポルトガルの北西部ポルト郊外にある工場で撮ったもの。魚をさばく作業台が総大理石造りなのが印象的だった。 作業台は8台あり、それぞれに7~8人の女性が並んで、一斉に頭と内臓、ウロコを取り除いていく。その手際は正確で速く、工場長いわく「機械化することも考えたが、イワシくらい小さな魚なら手作業のほうが速い」のだそうだ。また、手で触ることで、魚体に釣り針などの異物が入っていないかの確認もできる。 さばいた身は冷水で洗って血などを落とし、缶に詰めて、オリーブオイルや塩などを加えてから真空状態で密封。あとは巨大な釜に入れて缶ごと調理&加熱殺菌すれば缶成(完成)である。
■脂が酸化する時間はたったの8分
さて、オメガ3系脂肪酸は空気に触れると酸化して劣化すると書いた。ということは、魚をカットすれば、空気に触れる面積が増え、劣化がより促進されることになる。 この点において、日本の缶詰工場は素晴らしい取り組みをしている。カットしてから缶に詰め、真空状態で密封するまでの時間が驚くほど短いのだ。サバ缶なら、最短のケースでたったの8分である! それに対して、スーパーなどに並んでいる生の魚は、水揚げされてから数時間、あるいはそれ以上の時間が経っているのが普通だ。もちろん衛生的に処理されて冷蔵状態を保っているが、オメガ3系脂肪酸は劣化している。 では、実際に生の魚と缶詰では、どれだけオメガ3系脂肪酸の含有量が違うのか? 文部科学省の「食品成分データベース」で、生サバとサバ水煮缶を比較すると、サバ100gあたりのDHA量は、生サバが970mgなのに対してサバ缶は1300mg。EPA量は生サバ690mgに対してサバ缶は930mgだ。どちらもサバ缶のほうが約1.3倍多いことになる。 缶詰メーカーが原料の鮮度にこだわるのは、こうした裏付けがあるからなのだ。