金谷拓実は不屈 流した涙と抱える怒り
■「金谷拓実らしいゴルフ」とは
東北福祉大時代の2019年に国内ツアー「三井住友VISA太平洋マスターズ」を制覇。世界アマチュアランキングで1位に輝き、鳴り物入りでプロ転向してからもすぐにトッププレーヤーとして定着したが、海外ツアーで打ちのめされたのも一度や二度ではない。「すごくヘコんだ時もあった。特にアマチュアの時に頑張っていた(好成績が出ていた)から、プロになってもすぐうまくいくと信じていたけれど、うまくいかない時の方が多かった。でもやっぱり…諦めずに日々、成長を続ければチャンスは絶対にあると信じてきた」 「自分らしいゴルフ」。金谷拓実にとってのそれは何か。技術面で言えば、「ティショットはドライバーで勝負できる。飛距離が出ないと言われるかもしれないけれど、誰よりも真っすぐ打てる自信はある」。今季の日本ツアーでトップに立ったスタッツ7部門の中には、第1打の総合的な技術指標であるトータルドライビング(ドライビングディスタンスとフェアウェイキープ率をポイント換算した順位)も含まれる。
ただそれ以上に、金谷は精神面の強さに胸を張る。心・技・体でゴルフに最も必要なものは? もちろん「心」と返した。「心が、人を突き動かすから」。エリート街道を突き進んだ学生時代から、「諦めた試合はない」と断言できる。「優勝争いの時も、予選に落ちそうな試合でも、どの一打も一生懸命やってきた。それが自分のモットー。どんな一打も大切にしていくことが自分らしいプレーかなと思っています」 目の前のボールに心血を注ぐ。当たり前に思えることが、自分の長所であると理解を深めたのはむしろ「小さい頃から…いや、特にプロになってから」だという。それぞれの生活や将来を左右するはずの一打を“無駄にする”ようなプロゴルファーを目の当たりにしてきた。そういった選手を金谷は「大嫌いですね」と切り捨てる。「それが一番嫌い。誰とは言わないですけど、すごく腹が立つ」と言葉に怒りを込めた。 「日頃の取り組みが薄ければ、自信を持てず、諦めてしまう。でも、それだけのことを積み重ねてきたら、自分で自分を裏切れない。頑張ってきたのに諦めるのって、もったいない。自分は学生の時から何事にも目標を立てて取り組むことが大好きだった。そういったことは他人よりも秀でている自信もあった。それに(東北福祉)大学の時、(OBの)松山さんがあれだけ一生懸命トレーニングして練習する姿を見ていた。『こういう選手が世界のトップで戦えるし、そうあるべき』だと思ってきた」
■ハワイでシーズンイン
12月半ばにPGAツアー参戦が決まり、オフの期間は短くなった。1月第2週「ソニーオープンinハワイ」(ハワイ州ワイアラエCC)で新天地に飛び込む。「イメージはまだ全然湧かない。正直言って、今回の予選会を通って…(米ツアーに本格参戦する)というのは考えていなかったこと」。戸惑いがないわけではない。 「でも、やっぱり日々成長を続けることができれば、知らないうちにそういったレベルになっていると思う。日頃の取り組みを大事にしたい」。戦う場所がどこであろうが変わらない。どんな苦難が待ち受けていようとも、金谷は決して屈しない。(聞き手・構成/桂川洋一)