金谷拓実は不屈 流した涙と抱える怒り
ホールアウトしてから、喜びの涙が頬をとめどなく伝った。「もう、終わった瞬間、出てきました。カートでクラブハウスに送迎された時も止まらなかった。自分でもびっくり。悔しくて泣いたことはあったけれど、『うれしくて涙って出るんやなぁ』と思って」。現地の報道陣に囲まれている間も、顔をくしゃくしゃにする仕草はすぐに、ツアーのSNSで公開された。「なんか一人で泣いてたから、バカみたいでしたよね…」と、後になって嘆いたシーンをいったい誰があざ笑うことか。
■コーヒーはオレンジジュースに
「逆転して賞金王を獲っただけでも頑張ったと思うのに、すぐにセカンド、ファイナル(Qスクール)も通った。尊敬。マジですごいと思う。VISA(11月・三井住友VISA太平洋マスターズ)から6週連続の試合で…。最高に大変なところで、最高の結果を出した」。後輩のステップアップをそうたたえ、手放しで喜んだのは松山英樹である。
金谷は元来、日本ツアーの選手には珍しく長期の連戦を避けるタイプでもあった。心身ともにフレッシュな状態で出場試合に臨むのが信条。「出るからには勝つ」と思うからこそだ。それがPGAツアーのメンバーシップを手にしたのは6週連続出場の6戦目。少なくとも今季においては未知の連戦で、目標の達成には布石もあった。 「もともとは3連戦の後に1試合休んで3連戦…(のペース)にする予定だった」と後半戦のスケジュールを思案していた夏場のこと。オフに充てようと考えていた週の、会場までの航空券をエースキャディがすでに手配していたことが分かった。 「じゃあ出ようかな」と9月「ANAオープン」から最初の5連戦を敢行。ただ、長丁場に挑んだだけではない。「連戦にしたことで、栄養や身体のことを考えて、飲み物も変えたんです。(大好きな)コーヒーはオレンジジュースに。サプリメントも摂るようにしたら体調も良くなって」。どんな試合であっても惰性では臨まない。「その経験があったから、最終予選会も最後まですごく元気でした」。ポリシーは数カ月後の成功につながっていた。