遺言のデジタル化解禁でどう変わる?【WBSクロス】
今回のテーマは「遺言」。自分の死後、財産を誰にどのように残したいかを伝える手段ですが、日本では公証役場を利用しない場合、本人が手書きで作成することが義務付けられています。遺言書が本物かどうか裁判で争われるケースも珍しくありません。この遺言書について法務省はデジタル化を解禁する方向で検討しています。遺言をめぐる最新事情を取材しました。 東京・港区にあるビルの一室で行われていたのが、筆跡鑑定です。これまで1万件以上の鑑定を行ってきた「筆跡研究開発センター」鑑定人の朝倉太郎さん。中でも全体の7割を占めるのは遺言書の鑑定です。 「これが遺言書です。『お父さんは生前こういう字は書いていなかった』『ちょっとおかしいな』と相談という形で依頼がある」(朝倉さん) 日本では遺言書を作る上でその人が書いたものであることを担保するため、直筆が条件となっています。そして遺言書が本物かどうか判断する手段が筆跡鑑定なのです。
こちらは遺言書のサンプルと記者が筆跡を真似して加筆した偽物です。 鑑定してもらうと「拡大して細かいところの筆の運びは、よく見る必要性がある部分」(朝倉さん)。
文字を拡大して比較すると「この『に』は似せているが、1画目の線の入り方や湾曲、向きが全部違う。このままの流れでは第3条は違う筆者が書いている」(朝倉さん)。 遺言書の筆跡を巡る争いは注目を集める事件でも起きています。 「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、2018年に殺害された資産家の野崎幸助さん。「全財産を田辺市に寄付する」と書かれた遺言書を巡って、遺族が野崎さんの字ではないとして無効を訴えている裁判は6月21日に判決を控えています。 テレビ東京が入手した遺族側作成の鑑定書は56ページにおよび、遺言書にある文字と他の文書から集めた野崎さんの手書き文字を詳細に比較しています。 筆跡鑑定の現状について朝倉さんは「レベルが上がってくる模倣の技術を勉強しながらというところがある。10年、15年というサイクルでは鑑定人はやはり足りない」(朝倉さん)