高2で突然脳出血で倒れ、言葉を失った少年 現在20歳の青年が、家族と協力し歩けるようになるまで
リハビリを頑張るモチベーション
「障がいが残ったこと自体は不便だけど不幸だとは思っていない」と言う陸さん。お父さんはそんな前向きな陸さんの姿に助けられているようです。 「意識のなかった頃から『陸にしかできないこと、伝えられないことがある』と言い続けてきました。陸もその考えに同調し『リハビリを頑張る姿や目標にチャレンジすることが、同じような方々の力になれば凄く嬉しい』と言い『もっと喋れるようになって講演活動をしたい』という目標ももっています。また、年に1回、全国から当事者の方々が集まるイベント『脳卒中フェスティバル』に参加することが陸にとって最大の楽しみとのことです。これまで2回参加していますが『毎年、少しでも元気になった姿を主催者やInstagramで繋がった方々に見せたい』との気持ちがあり、これらがリハビリのモチベーションになっていると思います」 目標を掲げることで、前向きにリハビリを続けることができているようです。
陸さんの夢
陸さんには、ホノルルマラソンに挑戦という目標があります。発症する前、陸さんの母親は年に4~5回フルマラソンに出るほどマラソン好きでした。しかし、入院の付き添いや介助生活のためすっかり遠のいてしまいました。 陸さんが少しずつ歩けるようになり、母親の夢でもあったホノルルマラソンに一緒に出られたらいいね、と冗談半分で話していたといいます。そんな中、同じく10代で脳出血により半身麻痺を抱える女性が、時間制限なしの10kmコースに出場し、毎年タイムを縮めている姿を発見。昨年、タンデム自転車で大きな目標を達成したこともあり、陸さんのなかでは「次の目標はホノルルマラソン」と決まったようです。 「これまでと違ってスケールの大きい目標のため、本人のリハビリの努力もさることながら、様々な課題をクリアし、早い段階で挑戦の舞台を用意してあげたいです」とお父さんも意気込みを語りました。 最後に、同じように麻痺や失語症がある方たちや、それが身近ではない人たちに伝えたいメッセージについて聞きました。 「“可能性は無限大”です。これは、年齢、性別、障がいの有無にかかわらず、陸だからこそ伝えられるメッセージだと思っています。我が家でいう『可能性とは』決して『発症前の陸の状態に戻る』ということを意味しているものではありません。重度の障がいがあったとしても、今の陸には誰しもと同じく、目の前にはあらゆる選択肢と可能性が無限に広がっています。そして、可能性を広げてくれるのは、内面的な部分では『明確な目標を持つこと』。外面的な部分では『人との繋がり』に尽きると思っています。我が家もそうでしたが、自分たちの力だけでは乗り越えることはできない困難も、本当に多くの人との出会いに恵まれ、応援や協力をいただきながらここまできました。『人との繋がり』を大切に、地道に『目標』に向かって進んでいけば、その都度、違った景色が見えてくると信じています」 「可能性は無限大」と、大きな目標を掲げながら日々前に進む陸さん。支えるご家族とともに、夢を叶えてほしいと願います。 【参考資料】 聖路加国際病院『脳動静脈奇形』
ほ・とせなNEWS編集部