清水草一の自動車10大ニュース 3位は内燃機関車を使うには不可欠なアレの価格に関する話題
衆院選での与党大敗の影響
2024年も話題が豊富だった自動車業界ニュースの中から、清水草一氏がこれだと思う話題を10つ選び、ランキング形式でお伝えしている、「清水草一の自動車10大ニュース」。4位にランクインしたのは、内燃機関車を使うには不可欠なものの価格にまつわる話題だ。 清水草一が選ぶ自動車10大ニュース、4位はコチラ ◆いよいよベスト3 単なるクルマ好きによる、2024年自動車関連十大ニュース、いよいよベスト3に突入です。 ◆第3位 ガソリン・軽油の暫定税率廃止が決定! 衆院選での与党大敗の影響により、国民民主党が主張するガソリン・軽油の暫定税率撤廃が実現し、時期は未定ながら、いずれ廃止されることになった。 もともと暫定税率は「暫定」のはずが延々引き延ばされていたもので、すでに課税根拠を失っているというのが正論であり、ネット上では「やっとかよ」「当然だろ」と言った反応が相次いだが、個人的には驚くべきニュースだった。 暫定税率が廃止されると、ガソリンは25.1円+消費税(この消費税も税の二重取りと批判されている)分、軽油は17.1円+消費税分値下げされることになる。ガソリン高に苦しむ庶民には朗報だが、脱炭素という世界的な流れには完全に逆行する。 ◆ガソリンや軽油がかなり安い国 そもそも日本は、ガソリンや軽油がかなり安い国である。経産省の統計によると、日本のガソリン価格(2023年第3四半期)は、OECD加盟国38か国中、アメリカに次いで2番目に安い。約1年前のデータだが、日本が170円/リッター前後、アメリカが150円/リッター前後なので、現在とあまり差はない。 日本でガソリンが安い理由は、第一にガソリン税率がかなり低い部類に入ること。暫定税率が上乗せされていても、だ。さすがにアメリカよりは高いが、欧州諸国のおおむね半分である。 加えて日本は、物価高対策として、ガソリンの市場価格を168円/リッター前後に抑えるべく、約2年前からガソリン補助金を出してきた(現在は基準価格が185円/リッターになり、その分補助金は減額)。原油価格は世界共通につき、低税率+補助金効果によって、ガソリン安が実現してきたのだ。 ◆ガソリン補助金が終了しても安くなる 暫定税率が廃止される頃には、ガソリン補助金は終了しているはずだが、直近の補助額よりも、暫定税率廃止による金額のほうが大きいので、原油価格が再び大きく上昇しない限り、ガソリン価格は今より下がることになる。 ちなみにOECD加盟国で最もガソリンが高いのはデンマークで、325円/リッター前後。欧州はおしなべて300円/リッター前後となっている。 軽油に関しては、もともと日本は世界最安レベル。アメリカはガソリンより軽油のほうが若干高いからだ。ふだんの足にディーゼル乗用車を使っている私にはありがたい話だが、「ホントにいいんですか」という思いは残る。 ◆保有税減税の行方は? 自動車業界は、今回の暫定税率廃止に驚いているという。日本自動車工業会は長年、日本の自動車保有税の高さを批判してきたが、保有税ではなく、まず燃料税が下がることが決まったからだ。 11月に閣議決定した総合経済対策では、「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」と明記されていたのに、いきなり燃料税だけ下がれば、保有税を下げるのが難しくなる。バランス的には、保有税を下げて燃料税を上げるのが正しい方向性。暫定税率廃止は、その流れにも逆行となる。 単なるクルマ好きの内燃エンジン好きとしては、ガソリン・軽油価格が下がるのは大変ありがたい。EVの普及には逆風になるが、当分EVを買うつもりはゼロなので、私の知ったことではない。 こうなったら日本は開き直って、内燃エンジン優遇&反EVの牙城となったらどうか? 「EVはかえって環境に悪い!」と、世界に向けて堂々と論陣を張るのである。それはそれで正論のはず。捕鯨再開に続いて、世界にカウンターパンチだ! 文=清水草一 写真=茂呂幸正、清水草一、編集部 (ENGINE WEBオリジナル)
清水草一