【目利きが選ぶフランス映画】独特の世界観をつくる重要な装置、アパルトマンが印象的な4つのシネマ
夏の終わりのアンニュイな時期。夜更かしして、フランス映画を観ませんか?フランス映画には、恋、おしゃれ、アート、濃密な人間関係…人生で大事なことが全部が詰まっている。目利き10人におすすめのフランス映画について聞きました。今回はスタイリング・ディレクターの古牧ゆかりさん、モデルのはなさん、ライターの小柳帝さんセレクト。 【画像一覧を見る】 フランス映画の舞台となるアパルトマンは、 迷い込みたくなる迷宮だったり、人の気持ちを包み 反映する懐深い生活空間だったり。なんとも惹かれます。
ファンタジーや謎も住み着くアパルトマンの魅力。
「最近はストーリーがあるものが多くなりましたが、フランス映画ってもっと、結論があいまいだったり、筋立てもゆるめでそれが心地よかったものでした。どちらにしても、スケール観が小さくても独特の世界観を見せてくれるのが、フランス映画を好きな理由でもあります。そのひとつの窓口がアパルトマン。夢のある世界に繋がっている気がします」 古牧ゆかりさんがすすめるのは、孤独な青年が自分の過去を蘇らせようとするファンタジックなストーリー、『ぼくを探しに』。青年は同じアパルトマンの中でありながら、緑であふれ別世界のようなアジトを構える謎の女性と知り合います。 「アパルトマンが迷宮世界であることを楽しんだり、あるときは懐かしい生活感を見たり、またかっこいいインテリアに映画の精神を感じることもできます。『グッバイ・ゴダール!』などトリコロールを使ってとてもスタイリッシュな設計でした」
すすめてくれた人
古牧ゆかり/こまきゆかり スタイリング・ディレクター。90年代ファッション誌で活躍した後パリに3年暮らす。現在は多メディアにてファッション、インテリアの記事、広告を手掛ける。かごブランド『cargo』を主宰。 はな/hana モデル・エッセイスト。高校時代からモデルを始め、ラジオのナビゲーターから書籍、雑誌、WEBでの執筆まで広く活動。20代で語学習得のためパリに逗留し、アパルトマンに暮らした時期もある。 小柳帝/こやなぎみかど ライター・編集者・翻訳者・フランス語講師。最近の翻訳書にジャック・タチの『ぼくの伯父さん』のノベライズ。共著書に『ひとり~ALTOGETHER ALONE~』(誠光社)。主宰する仏語教室ROVAは今年25周年を迎えた。
『クウネル』2024年9月号掲載 取材・文/船山直子、原 千香子
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