それでも列車は走らせる JR北海道冬の闘い
北海道の雪の大変さは、本州の都市部に住んでいる人間には想像できないだろう。大雪といわれるような状態よりもはるかに雪が降り、風が強い状態になる。しかし、何があっても列車を走らせなくてはならないという使命が、JR北海道にはある。JR北海道の雪対策はどういうものだろうか? 北海道内では、年が明けて間もない1月7日から、サハリン付近で発達した低気圧の影響により、暴風雪となった。新千歳空港発着の航空機が欠航になり、JR北海道も函館本線・千歳線・札沼線・留萌線の各線で列車が運休。11日にも荒天となり、札沼線や日高本線で運休が発生した。JR北海道によると、11日の運休は北海道としてはめずらしく水分を多く含んだ雪であり、除雪に時間がかかったために札沼線は運転ができなかった。日高本線は高波による土砂流出が原因だった。 JR北海道の「冬季の安全安定輸送確保の取り組みについて」という文書によると、この冬は新しく3台の除雪機械の取り換えを行い、126台の除雪機械を全道に配備した。新しく導入されたのは、排雪モータカーにロータリー装置をとりつけたものだ。雪をかき寄せていったんは機械に取り込み、遠くへ雪を飛ばす。 雪をはねのけただけでは列車は動かない。雪がレールの間にはさまると困る設備がある。ポイントだ。進路を変えるために重要な設備だ。列車は、自動車とは異なり、レールの上を決まったとおりにしか走ることができない。雪がはさまると、切りかえることができない。そのために、「ポイント融雪ピット式」という装置を設置している。ポイント下部に箱型のピットと呼ばれる空間を設け、除雪を落とすと同時に、その底にあるヒーターで雪を溶かす。 また、ポイントの枕木と枕木の間に雪が詰まることを防ぐために、「ポイントマットヒーター」を設置した。他にも、ポイントを切りかえる際に圧縮空気を吹き付けて雪を吹き飛ばす設備も設けている。 機械だけでどうにかなるものではない。最後は、人力だ。冬、JR北海道は2000名規模で除雪の係員を雇い、列車を走らせるための除雪作業に取り組んでいる。それでも、列車は遅れることがある。その際には、運行計画を決定し案内するようにしている。 JR北海道の置かれた自然環境や経営環境は厳しく、それにともなう事故や不祥事もある。しかし、頼れる交通手段、とくに冬はかけがえのない交通手段として、JR北海道は存在しなければならない。 石北本線の上川~丸瀬布間の上白滝・旧白滝・下白滝では、下り列車が1本しか止まらない(上りは3本)。その1本に乗って遠軽まで通学する高校生の生活が、1月7日朝刊の朝日新聞に取り上げられた。列車を生活の手段として必要とする人がいる。 (ライター・小林拓矢)