日本は「ジャポン」、では「エタ・ジュニ」はどこの国? パリ五輪・パラ開会式で気になった「フランス語の国名」知られざる由来とは
ジャパンとジャポンと日本
日本で「ジョージア」(Georgia)はかつてロシア語読みの「グルジア」だったが、英語読みに変えてほしいとの要請を受けて2015年に変更された。もっとも現地では「サカルトベロ」だ。 現地呼称と国際的な呼び方が違うところはいろいろある。日本は英語で「ジャパン(Japan)」、フランス語で「ジャポン(Japon)」だが、これはおそらく「ニッポン」がポルトガル語の「ハポン(Japon)」(ブラジルでは「ジャポン」と読む)を通じてなまったものなので、無理することもない。 しかし、中国が日本には「支那」と呼ぶなといいながら、サンスクリット語の同じ語源から来た(諸説あるが最有力説は秦)の「チャイナ(China)」「シーヌ(Chine)」はいいというのは解せない。朝鮮の「コリア(Korea)」(韓国はRepublic of KoreaまたはSouth Korea)の語源も高麗だから、これも変だ。 ハンガリーは現地で「マジャロサーク」。ハンガリーはマジャール人より先にやって来たフン族由来だ。オーストリアはドイツ語で「エスターライヒ」。語源は同じだが、オーストラリアと間違えやすいので、こっちにした方がいいような気も。エジプトはアラブ語で「ミスル」だが、エジプトがあまりにも有名すぎるのも変えない理由か。フィンランドはフィンランド語だと「スオミ」だ。
インドが「バーラト」になる?
日本語訳が変なのもいろいろ。アルゼンチンはスペイン語で「アルヘンティーナ(Argentina)」、英語で「アルジェンティーナ(Argentina)」だが、日本語では英語形容詞「アルジェンタイン(Argentine)」の誤読か。そうした地名国名の雑学に興味があるなら、「365日でわかる世界史」(清談社)という拙著に網羅的に書いてある。 今後、ロサンジェルス大会までに起きるかもしれない大変化もある。モディ政権下のインドは現地呼称のヒンドゥー語の国名「バーラト(Bharat)」を好んで使うようになっており、もしかするとこちらで登場する可能性がある。ニュージーランドも、語源はオランダのゼーラント州なので、マオリ語の「アオテアロア」になっているかもしれない。 八幡和郎(やわた・かずお) 評論家。1951年滋賀県生まれ。東大法学部卒。通産省に入り、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任。徳島文理大学教授。著書に『365日でわかる世界史』『日本人ための英仏独三国志』『世界史が面白くなる首都誕生の謎』など。 デイリー新潮編集部
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