日本は「ジャポン」、では「エタ・ジュニ」はどこの国? パリ五輪・パラ開会式で気になった「フランス語の国名」知られざる由来とは
正式には韓日ワールドカップだった?
スペインはフランス語で「エスパーニュ(Espagne)」、スペイン語で「エスパーニャ(España)」だ。このように発音は似ているが、ローマ字の頭文字が英語と違うものがある。 チェコは英語だとCだがフランス語ではT。韓国は英語で「コリア(Korea)」だが、フランス語では「コレー(Corée)」だ。 この違いは大事だ。IOCとFIFAでは事実上の第一言語がフランス語なので、2002年のFIFA日韓ワールドカップの場合、正式には韓日ワールドカップとなる。このフランス語優先に基づいて、東京五輪の開会式アナウンスも、たとえばオランダなら「ペイ・バ、ネザーランド、オランダ」だった。 特殊なのはアメリカだ。日本語では「アメリカ合衆国」だが、英語では「ユナイテッド・ステイツ(United States of America)」からなので頭文字はU。フランス語はその直訳の「エタ・ジュニ(Etats-unis)」なのでEだ。 イギリスは英語で「ユナイテッド・キングダム(連合王国、United Kingdom)」。フランス語の「ロワヨーム・ユニ(Royaume-Uni)」は国連でも使われるが、五輪ではフランス語が「グランド・ブルターニュ(島の名前、Grande Bretagne)」、英語が「グレート・ブリテン(Great Britain)」となる。
韓国世論が激高した大間違い
日本語表記でなおかつ「英国」のように漢字の場合、本国の人たちが見当もつかない順序になる。北マケドニア、南アフリカや英領、米領が頭に着く植民地がそうだ。 英語は形容詞が先、フランス語は形容詞があとなので、南アフリカは英語で「サウス・アフリカ(South Africa)」、フランス語で「アフリーク・デュ・シュッド(Afrique du Sud)」だ。 台湾は英語で「チャイニーズ・タイペイ(Chinese Taipei)」だから頭文字はC、フランス語で「タイペイ・シノワ(Taipei Chinois)」だからTだ。 フランス語で「コレー(Corée)」、英語で「コリア(Korea)」の朝鮮については、南北が隣り合わせにならない工夫も必要だ。日本語なら「大韓民国」と「朝鮮民主主義人民共和国」で都合良く離れるのだが(北朝鮮は新型コロナの蔓延を理由に東京五輪不参加)、英語のロンドン五輪では韓国が「コリア」のK、北朝鮮は「デモクラティック・リパブリック・オブ・コリア(Democratic Republic of Korea)」のDだった。 パリ五輪では、韓国がフランス語の「コレー」で順序はCだった。一方、北朝鮮は「コレー・デュ・ノール(Corée du Nord)」とアナウンスでは呼びつつ、順序は「レピュブリク・ポピュレール・デモクラティク・デュ・コレー(République Populaire Démocratique de Corée)」のRに配した。ただ、小細工をしているうちに文書を間違えたらしく、韓国も「コレー・デュ・ノール」と紹介して韓国世論を激高させた。 マケドニアは「マケドニア旧ユーゴスラビア」(Former Yugoslav Republic of Macedonia)と呼ばれていたが、ギリシャとの論争を経て「北マケドニア(North Macedonia)」と改称し、パリ五輪ではフランス語の「マセドワンヌ・デュ・ノール(Macédoine du Nord)」で参加した。ギリシャは両国を領域としていたアレクサンドロス大王の国名を、スラブ人に使わせたがらない。