アラフォーで一大決心、夫婦揃って科学者から保育士へ。埼玉に立ち上げた”異色保育園”の日常
「子どもが何かに興味を持ったとき、すぐにこちらも対応してあげたいという気持ちが強い。すぐやることで、子どもの好奇心を満たしてあげることが重要です」と春香さんも言う。 舘野夫妻はともに、もともと地球惑星科学の研究者だ。 2人とも東京工業大学(現東京科学大学)で博士号を取得したため科学的な知識や経験が豊富。2人の特長を生かす形にして自然体験活動をさらに強化する。 「横瀬町など秩父周辺地域は山や森、川など自然がたくさん残っています。一日中森で遊んだり、川で釣りをしたりして過ごすような日をたくさん作りたい。自然の中こそ学びの場であり、いろいろな発見の場です。
僕らは地球を守るという言葉はあまり好きではありません。守るというより、より本質的に地球への愛が芽生える形にしたい。子どもの頃から自然を好きになってもらうことが最も重要です」(繁彦さん)。 ■科学者時代よりも幅広い論文を読んでいる 夏休みに「ちっぽけツアー」という自然体験ツアーも企画している。地球惑星科学の最新の論文などを見ながら、大学生レベルの話を小学生向けに説明している。 「科学者時代よりも幅広い論文を読んでいる。むしろかみ砕いて説明するのが大変。地球の46億年の歴史やスケールを感じてもらいたいという思いでやっています」と繁彦さんは話す。
保育園と学びの場を運営することで気づいたことがある。 「私の娘に限らず、子どもは自然の中で遊んでいるといい感性を発揮する。ちょっとした季節の変化にも敏感になり、世界が広がっている。楽しくなることが結果的に学びになる。子どもたちの応用力、受容力はものすごいし、大人は先入観がありますが子どもは常にフラットです」(春香さん)。 横瀬町や地域住民とのコミュニティ形成も子どもに好影響を与えている。 ナゼラボの隣には横瀬町や地域商社が運営する官民交流施設があり、子どもたちも自然に大人と交流している。