なぜ賛否が分かれている? 映画『ジョーカー2』の果敢な挑戦を考察。ミュージカルシーンの是非は?
社会現象を巻き起こした映画『ジョーカー』。その続編にして完結編となる『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が、10月11日(金)より公開される。ジョーカーと謎の女性リーとの関係を軸に、法廷劇やミュージカル要素が織り交ぜられた本作のレビューをお届けする。(文・村松健太郎)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】 【写真】ホアキン・フェニックスの狂気炸裂…貴重な未公開写真はこちら。映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』劇中カット一覧
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』 狂気が再び幕を開ける
あの『ジョーカー』から約5年。サブタイトルである“フォリ・ア・ドゥ=Folie à Deux”とは、フランス語で“2人狂い”を意味し、まさかの再演となったジョーカーによる世紀のショーにふさわしいものと言えるだろう。 2019年に公開された映画『ジョーカー』はDCコミックスの代表的なヒーローである“バットマン”に登場する、人気ヴィラン“ジョーカー”にインスパイアされた作品として誕生した。いわゆるアメコミ映画、ヒーロー映画とは一線を画した同作は、第76回ヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞するという快挙を成し遂げた。 さらにタイトルロールのジョーカー=アーサー・フレックを演じたホアキン・フェニックスが第92回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した。 R指定映画史上最大級のヒット作となり、日本でも興行収入50億円を超えるメガヒットを記録し、社会現象を巻き起こした。 待望の続編となる本作は、ヴェネチア国際映画祭でワールドプレミア上映されると賛否両論を巻き起こした。完成披露試写会で鑑賞した筆者もまた、さまざまな感情が交錯し、賛否それぞれの感想を同時に持った。 まず本作は、DCコミックスのキャラクターがベースになってはいるものの、その色合いは非常に薄くなったと言える。 原作コミックシリーズではヴィランの“トゥーフェイス”となる、ハービー・デント検事が登場するなど、ニヤリとさせる要素もあるが、それはあくまでアクセントの1つに過ぎない。 前作では、ジョーカーことアーサーが、ブルース・ウェイン(バットマン)の父親トーマス・ウェインと絡むシーンがあった。さらに、子供の頃のブルース・ウェインが登場するなど原作コミックとの繋がりを感じさせる部分も多かったが、今回は極端に少なくなっている。 この点からも分かる通り、本作はこれまでのDCコミックスの世界観を描くことには関心が払われておらず、あくまで“映画『ジョーカー』の続編”をいかに成立させるのか、に主眼が置かれている。