“まるで日本米”外国産がずらり カナダのスーパー 日本語で「あきたおとめ」も
安さと量に強み 日本産風トレンドに
世界の米生産量は精米換算で約5億トンとされ、インディカ米(長粒種)が8割、ジャポニカ米(短粒・中粒種)が2割を占めるという。日本産米が輸出で挑むのは国外のジャポニカ米市場だ。現状、日本からの輸出量は増加傾向にあるが、まだ4万トン程度。一方で、競合する米国産米の輸出量は約300万トンで、カリフォルニア産などの短粒・中粒種を多く含む。既にすしの原料米では、こうした日本産米以外が席巻している。 「カルローズ」(カリフォルニア産米の通称)は、グレードの高いものから低いものまで幅広く、価格もまちまちだが、日本産より安い傾向だ。カナダ・バンクーバーのスーパーでは6・8キロ入りのカルローズが「特別価格」として約14カナダドル(約1500円)で並んでいた。同じ店で扱う日本産の「あきたこまち」や「ミルキークイーン」はいずれも23年産5キロ入りで4500円前後だった。 量と価格で優位に立つカリフォルニア産などのジャポニカ米が、表示でも日本産風を取り入れる戦略がトレンドになっている。漢字、平仮名、片仮名表記で日本産風を演じているが、産地を偽装しているわけではない。商標上は問題ないため、たとえ誤解を招く表示があっても、日本では対応できないのが実態だという。 日本の米輸出団体も問題意識を持っていた。全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会は「カリフォルニア産などは日本語表記の銘柄も多く、区別がつかない」と認識する。その上で、海外で売り込む日本産米独自の統一ロゴマークを制作。会員が商品に印刷やシール貼付して、品質や安全性をPRする。ただ、コストや手間の課題もあり「まだ十分に浸透していない」としている。 今回の海外市場調査には産地関係者も参加した。長野県のJA関係者は「海外の店頭にただ並べるだけでは勝負できない。農家が適切に所得を確保するためには、価格競争ではなく、品質面を含めた日本産の価値提案と、それを評価してくれる取引先の開拓が重要だ」と冷静に見ていた。(宗和知克)
日本農業新聞