昨年11月の基本給、32年ぶりの高い伸び-日銀追加利上げの支えに
(ブルームバーグ): 基本給に相当する所定内給与は昨年11月に32年ぶりの高い伸びとなった。日本銀行が利上げの判断材料として賃金の動向を注視する中、今回の結果は賃金と物価の好循環が一段と強まっていくとする日銀の見方に沿う内容だ。
厚生労働省が9日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、所定内給与は前年同月比2.7%増と1992年10月以来の高水準。名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は3.0%増と前月から加速した。賞与など特別に支払われた給与が伸びた。物価変動を反映させた実質賃金は11月に0.3%減と4カ月連続で前年を下回ったものの、マイナス幅は前月から縮小した。
エコノミストが賃金の基調を把握する上で注目するサンプル替えの影響を受けない共通事業所ベースでは、名目賃金は3.5%増と3カ月ぶりの高い伸び。所定内給与は3.0%増と、同ベースでの公表が開始された2016年以降で最高だった10月の水準を維持した。
同日の東京外国為替市場の円相場は統計が強めの内容となったことから、円が買われている。足元では157円台80銭台円で推移。発表前は158円台前半だった。
日銀は、経済・物価情勢の改善が続けば金融緩和度合いを調整する方針だ。植田和男総裁は追加利上げを見送った昨年12月の決定会合後の会見で、利上げの判断に至るには「もうワンノッチ(1段階)ほしい」と説明。その見極めに春闘に向けた賃上げの動向を要素の一つとして挙げていた。歴史的な賃上げを実現した24年春闘と同水準の目標が掲げられる中、賃金上昇の持続性が焦点となる。
みずほ証券の片木亮介マーケットエコノミストは、「昨年の高い賃上げが夏場にかけておおむね反映されてはいるが、その流れが引き続き見えている」と指摘。今年も昨年並みの賃上げが期待できそうな情勢だとし、「支店長会議や来週の氷見野副総裁の発言で日銀の評価を確認していく形になる」と語った。経済・物価自体はオントラック(想定通り)で、1月会合で利上げはできる状況にはあるとの認識も示した。