NHKドラマ「燕は戻ってこない」主人公・リキの奮闘から紐解く「現代女性の貧困問題」
おひとりさまで「非正規雇用で生計を立てる」のは難しいのか
連合総研「正規雇用で働く女性に関する調査2022」(調査対象者:全国の非正規雇用で働く20歳~59歳の女性1000名)では、配偶者・子有無別「経済的ゆとりの有無」の割合が提示されています。 「子いる・配偶者いない」層、つまりシングルマザーの家庭が、経済的なゆとりを抱いていないことがわかります。 次いで、ゆとりのなさを感じているのは「配偶者も子もいない」層。なかでも「まったくゆとりがない」人は全体の3割以上いるため、経済的なゆとりがない人が多いと考えられるでしょう。 また、同調査は女性を調査対象としていますが、非正規雇用で働く男性も同様の事情だと思われます。
非正規で働く単身の人が陥りやすい「相対的貧困」とは
今まで多くの統計をみてきましたが、そもそも貧困とはどういった状況なのでしょうか。 まず、貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」があります。 厚生労働省「生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会」資料では、以下のように定義されています。 絶対的貧困に関する概念の一例としては、ラウントリーの一次貧困・二次貧困がある。 これは、肉体上の健康保持に必要な栄養量を確保するための食費に着目して、これに家賃や衣服費などを加えた水準に満たないものを貧困と捉えている。 相対的貧困に関する概念の一例としては、タウンゼントの相対的剥奪がある。 これは、標準的な生活様式からの物理的な剥奪や 社会的な剥奪の度合いに着目して、この度合いが著しく高まる所得水準を貧困と捉えている。 出所:厚生労働省「第7回生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会 これまでの議論を踏まえた検討課題と論点の整理(案)」 たとえ珍しいとは言い切れないとしても、手取りが14万円程度の場合には「相対的貧困」に陥っている可能性も考えられます。 たとえば、手取り14万円で3~4万円の奨学金を毎月返済していたり、家族に仕送りをしたりしていれば、生計を立てるのはむずかしくなるといえるでしょう。 しかし、相対的貧困は見えにくく、周囲からも気付かれにくいのが現状です。 こうした状況にある人でも生活に必要なのでスマートフォンを持っていたり、最近は安くておしゃれな洋服を手軽に購入できるので見た目にも分からなかったりするかもしれません。 NHKドラマ10「燕は戻ってこない」に登場するリキ(石橋静河)とテル(伊藤万理華)は相対的貧困に近いといえます。 病院の受付事務として働く見た目もイマドキの女性で、不自然な点は特にありません。しかし、リキは実家に帰る費用や引っ越し費用も必要時に捻出できず、テルは500万円の奨学金を抱えて風俗でも働いています。 しかし、こうした状況にある人は支援の対象になりにくいのが現状であり、かつ彼らを対象にしたサポートもあまり見受けられないため今後の動向に注目していきたいところです。