Amazon史上最大の投資、Anthropicへ40億ドルの投資完了 AnthropicにかけるAmazonとBedrockの強化
クラウド戦争に向けたAmazonの動き
大手テックで次なる収益の対象となる「クラウド」ビジネスの強化は各社ともに喫緊の問題だ。そこでAmazonはAnthropicに巨額の出資をすることでライバルに挑んでいる。 Anthropicのテクノロジー、中でもClaude 3のサービスをAWSに導入し、Anthropicは主要なクラウドプロバイダーとしてAWSを利用することに同意。また同社はAmazonの独自設計チップTrainium(機械学習アクセラレーター)やInferentia(推論に特化したチップ)を基盤モデルのトレーニングに利用している。 AmazonがMicrosoft同様にクラウド上でのAI機能を拡充し提供するのは確実であり、おそらくAWS上のAI生成プラットフォーム「Bedrock」の魅力を高める要因となる。 Anthropicの基盤モデルのClaudeはOpenAIやChatGPTの競合。同社は3月に大規模言語モデル「Claude 3」ファミリーをリリースし、スタンダードベンチマークテストでOpen AIやGoogleを上回る性能を示したばかりだ。 このClaude 3ファミリーはHaiku、Sonnet、Opusと3種類がリリースされ、それぞれがインテリジェンスやスピード、コスト面でのユーザーの多様なニーズに対応しているとのこと。 例えばHaikuは低価格設定で、同等モデルのGPT-3.5やGemini 1.0 Proと比較してもパフォーマンスが高く、最も高価格かつ高性能のOpusは科学的データの分析とコンピュータコードの生成に有用だとしている。Haikuはすでに一部のユーザーから「非常に有能で、価格が安すぎる」と評されるほどの高評価だ。 AWSのData and AI部門の担当副社長であるSwami Sivasubramanian氏は「Anthropicの生成AIと、Amazonの業界最高クラスのインフラAWS TraniumやマネージドサービスのBedrockを組み合わせることで、顧客に迅速で安全、かつ責任ある生成AIのイノベーションをさらに届けられるようになる」とAmazonのブログでコメントしている。 Amazonはこの最強Claude 3の発表後まもなく、同機能を順次Bedrockに追加。現在利用可能なものはSonnetとHaikuであるが、Opusも近日リリース予定でファミリーの全シリーズの利用がかなう。 BedrockのAIフルマネージドサービスでクラウドユーザーは、1つのAPIから複数のモーダルにアクセスが可能、ClaudeのほかCohereやオープンソースのMistralやMetaのLlmaの利用が可能となり、顧客や従業員向けのモデルだけでなく、自社でサードパーティーモデルの構築も可能になっている。 Anthropicへの出資でAmazonは、最強のClaude 3を提供する権利を留保して競合に差をつけることで、投資家から「クラウド上のAI機能でAzureに後れをとる」と見られている立場を返上したい狙いがある。 今後企業のAI関連の需要が増加することで、Amazonは立場の返上だけでなく収益のアップも確実に見込めるとされている。 顧客には、AWSのクラウドサービスまたはS3を利用してBedrockのプラットフォームで自社AIアプリの作成が可能、しかも最前線のClaude 3の利用が可能であるとアピールできるとし、話題のスタートアップや一流企業、政府機関の多くが同社のマネージドサービスを選択すると期待している。 また、AWSはスタートアップ向けに主要なAIモデル利用の無料枠プログラムを拡大するとロイターのインタビューで明かしている。 スタートアップにAnthropicやMeta、Mistral AIなどの他社プロバイダーからのモデルをクラウドで利用する際の無料枠を提供。ファーストストップとしてスタートアップにAWSを選んでもらえるよう、エコシステムをバックアップするものとしている。 Amazon側は、この無料枠は同社ではなくAnthropicの収益につながるとしたうえで、これはエコシステム構築に不可欠で過去10年間ほどで60億ドル以上の無料枠をスタートアップに提供してきたと明かしている。