闇バイトの連絡手段「テレグラム」はなぜ規制できないのか。日本政府が禁止の「考慮」すらできない理由
◆1つのアプリがなくなっても、結局は“モグラたたき状態”に
こんなケースもある。フランス政府は2024年8月、テレグラムが犯罪のプラットフォームを提供しているとしてCEOのパベル・ドゥロフ氏をパリ北部の空港で逮捕した。ドゥロフ氏は500万ユーロの保釈金で釈放されたが、今もフランス国内で監視下に置かれている。ただ、ドゥロフ氏を逮捕しても、投獄しても、フランス当局がドバイに拠点を置くテレグラムを国内で禁止にすることは難しいし、テレグラムを廃業させることもできない。 さらに言えば、別の暗号化されたアプリも存在するし、1つのアプリがなくなっても、また別のアプリが台頭するだけなので、モグラたたき状態になるだけだ。いちいち摘発することはできなくなるために、フランスのようなやり方は、暗号アプリを使う犯罪行為に対する根本的な解決にはならない。 日本の警察も、テレグラムやシグナルに対して直接できることは少ない。犯罪者の情報をテレグラムやシグナルの運営側に照会したり、アカウント情報を入手したりしようとしても運営側はいちいち協力してくれない。また先に述べた通り、国家の一大事となるような重大事件が起きても、運営側自体が、ユーザーの暗号化されたチャット内容を解読できないため、提供できる情報は限定的だ。 当局ができることは、闇バイトで捕まった犯罪者のスマートフォンを目の前で解除させて、テレグラムまたはシグナルのアプリを起動させ、そこでメッセージのやりとりを読んだり、相手のアカウント情報を集めて捜査に生かしたりすることしかできない。もちろん、そこから相手の素性をつかむことは難しいだろう。
◆闇バイトの掲示板規制も、国外運営であれば難しい
闇バイトの場合、闇バイトを募集している掲示板などを摘発できる可能性はあるが、これには基本的にその掲示板サイトが日本国内で運営されている必要がある。もし国外で運営されているとして、日本と関係性のよくない国だった場合は、掲示板などを封鎖させたり、アクセスを禁止にしたりすることは難しい。 一方で、アメリカや欧州など日本と親しい国なら、犯罪の深刻さを考慮した上で、日本の当局の要請に応じてくれる可能性はある。それには手間も時間もかかるし、先にアプリでも指摘した通り、一つの掲示板をつぶしても、また別の掲示板が登場するので効果的な対策とは言い難い。