なぜホンダNS400Rは、マニアックな人気を誇るのか? かつては62万9000円で買えたレーサーレプリカに迫る!
“ロスマンズカラー”をカジュアルに乗りこなす?
飯島:速い! でも思ったより運転しやすくて、面白かったなぁ。アイドリングからスタート時はゴロンゴロンと独特の振動がありますが、アクセルを開けていくとその振動がスッと消えました。あと「軽い」と思いましたね。ライディングポジションも意外に前傾はキツくなくて、乗りやすかったです。 カワニシ:後ろから付いていきましたが、寛騎くん、運転上手いですね。乗り慣れているという感じでした。さすが仮面ライダー。 飯島:エグゼイドに出てくるバイクはオフロード車だったけど、NS400Rも仮面ライダーのマシンにぴったりかもしれないですね。このカラーリングもカッコいいなぁ。 カワニシ:これは当時、HRCワークスマシンのスポンサーで現在は消滅した英国の煙草とビールのブランド、「ロスマンズ」カラーです。グラフィックから「Rothmans」のロゴまで忠実に“レプリカ”しているのが、あの頃のバイク小僧にはたまらなかったんです。 飯島:こういうレーシーなバイクは革ツナギが似合うんだろうけど、逆にバイクが派手だから、今日みたいな色は抑えめでカジュアルなファッションで乗るのもいいと思うんですよ。若い人が乗ったらカッコいいと思います。 カワニシ:2スト400ccというと“ジャジャ馬”というイメージかもしれないけど、NS400Rはホンダらしいというか、わりと優等生的にしつけられているんです。この個体はノーマルマフラーで排気音も抑えられているし、排気煙も気にならない。さらっと街乗りできそうだし、ツーリングにも行けそう。
『バリ伝』巨摩郡が乗った伝説のバイク
飯島:80年代のレーサーレプリカっていうと、250ccが中心ですけど、400/500cccのほうがじっさいのGPマシンの排気量に近いし、車体も大きくてカッコいいと思うんですよね。 カワニシ:確かにそうですね。ただし当時レプリカに夢中になった若者にとっては、やはり車検のない250ccの維持費が安かったこと、400/500ccはパワーがあり過ぎて、公道では手に負えないイメージだったことから、NS400Rも販売面では振るわず、一代限りで生産終了となったんです。 飯島:そうなんですね……。でもそういう意味では、希少性は高いということですかね。この個体はほとんどノーマル状態だし、程度もいいから、価値がありそうですね。 カワニシ:いい状態で中古市場に出ているのは数台でしょうね。相場的には、200万円前後というところでしょうか。ただしNS400Rって、じつはあることから、マニアックな人気があるモデルなんです。 飯島:えー、なんだろう……。 カワニシ:80年代に大ヒットしたバイク漫画『バリバリ伝説』。その主人公の巨摩郡(こま・ぐん)が作品中で乗っていた愛車がNS400Rだったんです。グンが通う大学裏の山道で行われたバトルで、4ストが有利な中低速カーブが連続するコースにも関わらず、グンの駆るNS400Rが圧倒的な差をつけて勝ってしまうというシーンがあって。だから僕ら、当時のバイク少年たちはNS400Rを見ると自然に、「グンのバイクだ~」と思ってしまうという。 飯島:アラフィフあるある、なんですね。じゃあ、間違いなくウチの父も読んでいたはずだなぁ。今度「グンのバイク乗ったよ!」って自慢しようっと(笑)。
【プロフィール】飯島寛騎(いいじまひろき)
1996年8月16日生まれ。北海道出身。2016年『仮面ライダーエグゼイド』にてテレビドラマ初出演・初主演を務め、俳優デビュー。近年の主な出演ドラマに「僕らの食卓」(W主演・2023)、「シンデレラ・コンプレックス」(W主演・2024)、「御社の乱れ正します!」(2024)など。2024年10月18日からは、主演を務めた「ぼくとぼくが好きな彼と、君と。」がBUMPで全話配信中。 文・河西啓介 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・堀直樹 ヘア&メイク・Ryo 編集・稲垣邦康(GQ) 取材協力・バイク王つくば絶版車館