9・11後の「反テロ」対策が生んだアフリカ・東南アジアの強権政治
テロの脅威が最も深刻な、マリ、ニジェール、ブルキナファソといったサヘル地帯 Александра Замулина - stock.adobe.com
世界の耳目がウクライナでの戦争に注がれるなか、3月中旬、国際社会の安全保障に関わる一本の報告書が刊行された。オーストラリアのシンクタンク「Institute for Economics and Peace」が、2012年から刊行しているGlobal Terrorism Index(グローバル・テロリズム・インデックス)2023年版である。過去1年間に世界各地で発生したテロの件数や被害規模に関するデータが示されており、毎年発表されるため、各国の情勢の推移を継続的に把握できる利点がある。 最新の報告書を読みつつ、筆者が専門とするアフリカ諸国の情勢を思い浮かべると、2001年9月11日の米国同時多発テロ(9・11テロ)以来およそ20年間続いてきた「反テロ」の試みがアフリカにおいては奏功せず、国家による市民の人権抑圧を助長する結果に終わっているケースが多いことを痛感させられる。国際社会は今日、「反テロ」を大義名分とする様々な施策が生み出した強権政治の問題に向き合う時期を迎えているのではないか。 2023年版報告書によれば、2022年に世界で発生が確認されたテロは3955件で、前年の5463件から3割近く減少した。また、テロによる犠牲者は6701人で、こちらも前年の7142人から減少した。
本文:5,568文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
白戸圭一