関学大が善戦もアメフット日本一を決めるライスボウルは社会人が12年連続V…大会の是非を真剣に議論すべき時期に
アメリカンフットボールの日本一を決める第74回ライスボウルが3日、東京ドームで開催され、社会人Xリーグ王者のオービック・シーガルズが35―18で学生王者の関学大ファイターズを下して7年ぶり8度目の優勝を果たした。関学は前半を12―14と健闘したが後半に入って地力の差が出て点差を広げられた。関学は学生王者として6年ぶりとなる3タッチダウンを記録したが、社会人の12年連続勝利となった。試合後、関学の大村和輝監督は「安全性を考えるともう必要ない」とライスボウルの見直しを訴えた。
関学大が仕掛けた奇襲
サイドラインで関学の司令塔であるQB奥野耕世が号泣していた。 「試合が終わった瞬間に泣くと思っていなかったが涙が出てきた。一番思い出したのは練習のこと。みんなに助けられて、楽しかった思い出、辛かった思い出が蘇った」 様々な感情が入り乱れた。“辛かった思い出”のひとつは、2018年5月の日大との定期戦で起きた「反則タックル事件」の当事者となった問題だろう。仲間や家族、周囲の人たちに支えられ社会問題にまで発展した苦しい時期を乗り越えた。その後、エースQBとなり、学生3連覇を果たし東京ドームに乗り込んできた。しかし、19年ぶりの悲願を達成できなかった悔しさと、このゲームを最後に16年間続けてきたアメフトにサヨナラを告げる思いも重なり涙があふれた。卒業後は、関西の民放テレビ局に就職するため、Xリーグでアメフトは続けない。 「小1から16年間、アメフトをずっとやってきたので、ついに終わってしまったという寂しさと、16年間、何不自由なくお金の掛かるアメフトをやらせてもらった両親に感謝したい。具体的には考えていないですが、アメフトで育ってきたようなもの。何かしらの恩返しで貢献できれば」 奥野は試合後インタビューの途中でも感極まって口元を手で抑えた。 関学はキックオフから奇襲を仕掛けた。ゴロを蹴り攻撃権を奪うオンサイドキック。大村監督が「当たればラッキー」とした作戦が成功した。ドライブを続けQBの位置にRBを配置するワイルドキャットフォーメーションからRB前田公昭が左のオープンに10ヤードを切り裂いて先制TDを奪う。オービックに2TDを返されて、逆転を許すが、第2QにRB三宅昂輝が84ヤードの独走TDを決めた。同点狙いのツーポイントコンバージョンは失敗したが、前半は2TDで並び12-14とほぼ互角に食い下がった。 だが、Xリーグ覇者のオービックは眠っていたに過ぎなかった。