映画「ホテル・ルワンダ」の舞台に不法移民を送り込む…英国の計画に物議 安住できるか?大虐殺乗り越え「奇跡」の復興遂げた国の実情とは
しかしその直前、欧州人権裁判所が、「難民認定を受けるための公平かつ効率的な手続きにアクセスできなくなる」とのUNHCRの懸念などを踏まえ、移送を差し止める仮処分を決定。これを受け、英政府は移送中止を余儀なくされた。 ジョンソン氏退任後も方針に変更はなく、スナク現首相も計画を推し進める。しかし、2023年11月、英最高裁は「移民が母国に送還される危険がある」とし、計画は違法との判断を下した。 国内の法律の壁にも直面したスナク氏は12月、ルワンダ政府との間で新たな条約を締結した。ルワンダが移民らの安全や支援を確保し、母国や安全ではない第三国に送還・移送しないよう保証することを柱とし、安全性への懸念を払拭する内容になっている。 さらに、ルワンダは「安全な国」だと定義し、移送を阻む裁判所の命令や拘束力を回避できるような仕組みを盛り込んだ法案も提出。早期に成立させて計画を実行できるように急ぐ。 ▽悲劇からの発展
人権重視の欧州の価値観では「危険な国」との烙印を押されるルワンダの実情はどうなのか。そんな思いを胸に今年1月中旬、現地に赴いた。 ルワンダは面積が四国の約1・4倍。多数派のフツ人と少数派のツチ人が長年対立し、1994年にフツ人主体の政府軍や民兵がツチ人やフツ人穏健派ら約80万人を虐殺した惨劇の歴史がある。1994年以降実権を握るカガメ大統領は民族和解を推進。外国投資の呼び込みにも取り組み、2022年の国内総生産(GDP)成長率は8・2%に達した。 首都キガリには経済成長の象徴でもある高層ビルが立ち並ぶ。国際会議場や高級ホテルもあり、インターネットが利用できるカフェでは若い人たちが集っていた。道路はゴミがなく清潔で、国民も穏やかだ。生活は決して裕福とはいえず、発展途上の国であることは否定できないものの、30年前の惨劇からは想像がつかないほど穏やかな時間が流れていた。 英国からの移民の受け入れ先となる施設「ホープ・ホステル」は、キガリの高台に建つ。「ゲストとして来て、友達として帰ってください」。敷地の入り口には歓迎の看板が掲げられていた。