見かける機会が増えた「バインミー」専門店 サブウェイの教訓を乗り越え、日本人の日常に溶け込めるのか
近年、街中で「バインミー」専門店を見かけるようになった。バインミーとは、いわゆるフランスパンに肉やハムなどを挟んだベトナム料理。見た目は飲食チェーン「サブウェイ」が販売しているサンドイッチに近い。 【画像】ドンキやイオンに出店しているチェーン店のバインミー、店内の様子、メニュー表(全6枚) 現地では一般的なファストフードのバインミーだが、日本での認知度が高まったのはここ3~4年くらいと思われる。国内では既に複数の事業者がチェーン展開しており、全国的なブランドが多いハンバーガーチェーンのような規模にまで成長するのか気になるところだ。そこで今回は、国内18店舗(12月9日時点、以下店舗数は同日時点)を運営する「バインミーシンチャオ」のブイ・タン・ユイ社長に話を聞いた。
インパクトある見た目、アジア料理人気が「ブーム」の背景に?
バインミーは本来、ベトナム語でパンを意味する。ベトナムではフランスの植民地時代にフランスパンが持ち込まれた。現在のようなサンドイッチ型のバインミーが広がったのは、第二次世界大戦後とされる。肉、野菜のほか、パクチーなどハーブ類を挟むのが一般的であり、魚を挟むことはない。 「現地では基本的に朝食で食べますが、間食で食べる人もいます。主に屋台で販売しており、1個当たり150円が相場で、高いものでも300円ほどです。基本は外で買うもので、家庭では作りません」(ブイ・タン・ユイ社長) 日本では在日ベトナム人の増加とともにバインミー専門店が増え、近年メディアで目にすることも増えた。特に認知度が高まったのはコロナ禍以降である。彩り豊かな見た目や、アジア料理人気が影響してSNSで話題が広がっていった。健康志向が高まる中で、野菜を摂取できることも人気の一因だろう。
「いずれはマクドナルドのように」
バインミーシンチャオは都内を中心にフランチャイズ展開しており、現在は18店舗で他業者より店舗数が多い。社長は将来的に「マクドナルドのようなチェーン店にしたい」としており、並々ならぬ気合が入っている。 もともと同チェーンは、2016年にユイ社長が弟と共同で創業。高田馬場に1号店を構えた後、2019年に浅草で2号店をオープンした。今回訪問した浅草店はビルの2階に位置し、主要道路に面していないものの店内から隅田川を望めるのが売りだ。店内はアジア料理店のような雰囲気で、日本人客と外国人客でにぎわっていた。客は女性の方が多い。店員はベトナム人である。 販売するバインミーは全11種類。価格はおおむね700~800円台で、「焼き豚肉バインミー」や「スペシャルバインミー」などが人気だ。ベトナムの麺料理「ミークアン」やビーフン、サラダなども提供する。ドリンクはベトナム風のコーヒーやフルーツを使ったティー、グアバジュースなど東南アジアを思わせるものが多い。バインミーとドリンクのセットは30~50円引きとなる。 「現地の味を日本人にも楽しんでもらいたいという思いで創業しました。そのためバインミーの味は日本人向けにアレンジせず、現地のものを再現しています。そもそもバインミーはもともと日本人受けする料理だと思っています。チェーン展開では、全店でメニュー構成を統一しています」(ユイ社長) 近年はパクチーブームもあり、国内消費者の食に対する嗜好(しこう)の幅が従来以上に広がっている。前述の通り、いつかはマクドナルドのような大チェーンにしたいとユイ社長は意気込んでおり、メニュー表もファストフード店のように、見てすぐに全体像が分かるような構成になっている。