見かける機会が増えた「バインミー」専門店 サブウェイの教訓を乗り越え、日本人の日常に溶け込めるのか
サブウェイの教訓を乗り越えられるか
バインミーは、ワタミが買収して話題になったサンドイッチチェーン「サブウェイ」のサンドイッチに似ている。サブウェイは自分でトッピングをアレンジできる点や、野菜を積極的に食べられる点が注目され、店舗を拡大していった。しかし、2014年に500店舗弱まで拡大したのをピークに勢いを失い、現在では187店舗しかない。 サブウェイが日本で思うように拡大できなかった背景には、注文方式の煩雑さがあるといわれている。注文の際、パンの種類や追加のトッピング、野菜やソースを自分で選ぶ必要がある。自分で商品を選ぶならまだしも、口でスタッフに伝える仕組みは確かに面倒である。調理に時間がかかる点もファストフードとしては難点で、量の割に値段がやや割高な点もマイナス要因と筆者は考えている。 反対に、国内のバインミー店舗は今回の取材先を含め、一定のメニューで提供するところが多く、サブウェイのような煩雑さは感じない。他方、価格は単品でどこも600~800円台であり、牛丼やバーガーチェーンと比較して価格面では厳しそうだ。
狙いは商業施設 日本人の「日常」に溶け込めるか
バインミーシンチャオは18店舗中、フランチャイズが12店舗を占める。フランチャイズ加盟の問い合わせも多く、これまでは組織体制を確立するために出店を絞ってきた。ほとんどがベトナム人オーナーで、日本人オーナーがいる店舗は2店舗しかない。店員も基本的にベトナム人だ。来年度以降、本格的に出店を強化したいとユイ社長は話す。 「他の業態よりも比較的初期投資額が小さいこともあり、今後はフランチャイズ店をメインとしつつ、直営店も出店します。地域別では関東と関西が中心で、立地は路面店と商業施設内を狙っていきたいです」(ユイ社長) 特に勝機を見いだしているのが商業施設内の出店だ。現状はドン・キホーテの1階部分で路面店として営業する店舗、イオンモールのフードコート内店舗などがあり、競合と比較して商品力と認知度で勝ると考えている。 エキゾチックな雰囲気が強い他のバインミー専門店と比較し、バインミーシンチャオはカフェらしい雰囲気があり、メニュー構成も分かりやすい。この点は、今後の店舗展開で競合店と差がつく要因になるかもしれない。 現状、まだバインミーはSNSでの話題性や物珍しさで食べに行く人が多いようにも感じる。しかし、1食でパン・野菜・肉をバランス良く食べられる栄養面や、手軽さの持つポテンシャルは大きい。順調に店舗数が増え、認知度が高まれば、日本人の日常にも根付く可能性は低くない。将来的には牛丼やハンバーガーチェーンと同様、頻繁に見かける日が来るかもしれない。
著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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