【毎日書評】こころがスッと晴れる!臨床心理学の第一人者・河合隼雄さんが残した人生のヒント
筋道の立った人生はない
どうも「話」にしようとすると筋道を立ててしまうんですね。で、筋を追ってきれいにまとまると(なるほど!)ともっともなことに感じるのですが、人生というのは、あんまりそういうことはありません。 そんなに筋を追って、うまくまとめられるような、きわだったことは、むしろ起こらないと思っていいんじゃないでしょうか。 つまずきイコール発展。つまずきが大きいほど発展の可能性も大きい。その希望を持ち続けることです。(140~141ページより) そういう意味で、すばらしい発展とは大きな苦しみを伴うものでもあるということ。 したがって大切なのは、その苦しみをちゃんと引き受けること。そんなことを続けていくなかで人は、心を使って「生きる」という大事業を果たしていくわけです。(140ページより)
にもかかわらず「やる」と決意する
他人との間の越えがたい線というのは、この世に生きている限り、だれもが感じているんじゃないでしょうか。それを乗りこえて関係を持つのは、もしかしたら、ほとんど不可能に近いのかも知れない。 にもかかわらず「やろう」と決意することが、愛するということではないかと思うのです。(155ページより) それが難しいとはっきり認識したうえで、あきらめず、関係を切らずに「やろう」としていくと、不思議なことにいつの間にか相手との関係が変わっていたりするもの。 急激な変化というよりも、夜が白々と明けるように、いつの間にか朝になっているような感じだと著者は表現しています。 「ハッ! わかった!」という劇的な変わり方をしても、すぐにまたわけがわからなくなり、ごちゃごちゃ混乱して、また少しわかって……。そんなサイクルを繰り返していくと、うるしを塗るように、だんだん光ってくるものだということです。(155ページより)
自分を信じて「よさ」を開発する
自分の持っている器量とか決断力とかを、もっと信じなきゃ。信じて開発しなきゃ。みんな、あっちこっちからの情報で、人とくらべて自分は駄目なのだと、悪いところばかり目につき、悪いところを直そうとしすぎるのと違いますか。 悪いところなんて直るはずがないんだから(笑)。そりゃ直るかも知れませんよ、でも、悪いところを直すのに十五年もかかるんだったら、良いところを一カ月で開発したほうがトクでしょう。悪いところを直すのに、えらい苦労していやな思いしてーー結局そんなに変わらないのだから。(159ページより) たとえば英語と話すとき、「これだけしか話せない」とマイナス思考でいると、話せない方向にどんどん進んでしまうもの。しかし、「でも、これだけ話せる」というプラス思考に転換することができれば、意外と話せたりします。 そんなところからもわかるように、「これだけできる」という考え方をすると力が出てくるものだということです。(158ページより) 河合さんのことばのみならず、話題に関連のある本の紹介、引用なども収録。もちろん河合さんの著作に関しても、書名と出版社名が記載されています。そのため、心の問題を解決するために活用できるだけではなく、心理学についての関心を深める際にも大きく役立ってくれそうです。 >>Kindle unlimited、99円で2カ月読み放題キャンペーン中! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: PHP文庫
印南敦史