岩屋外務大臣 クリスマスの「弾丸訪中」から占う2025年の日中関係
■中国人への訪日ビザを緩和 10年ビザの新設も
かねてから日中間の大きな懸案だったビザの問題について、中国は11月末から、日本人に対する短期渡航ビザの免除を再開させ、期間を15日から30日に伸ばしていた。 これを受け、日本側も中国に対する何らかのビザ要件の緩和を検討していたが、25日午後3時半から行われた、日中ハイレベル人的・文化交流対話の中で、その内容が発表された。 富裕層の中国人に10年マルチの観光ビザを新設することや、団体観光ビザの滞在可能日数を15日から30日に延ばすことなどが主な内容だ。香港メディアには、岩屋大臣からの「クリスマスプレゼント」と報じるコラムもあった。 「10年ビザが取れるような富裕層は、もう3年や5年のビザを持っているから、それほど効果はないのでは」という声も聞かれるが、中国側が短期ビザ免除を復活させたことに対応して、日本側としても出来る限りの緩和措置を取ったということだろう。 その後、午後5時に岩屋大臣は北京在住の日本人と面会し意見交換、最後は午後7時から中国共産党で外交部門を担当する、中央対外連絡部トップとの夕食会と、過密日程をこなし、帰国の途に就いた。北京での滞在時間は、わずか20時間弱だった。
■まだ山積する課題 2025年の懸念は「戦後80年」
1日でこれだけの日程をアレンジし、岩屋大臣を受け入れたことについて、ある日中関係筋は「中国側の意欲が非常に高かった」と振り返る。 「2025年1月にトランプ政権が発足するのを前に、周辺環境を安定させておきたかったのだろう」というのが彼の見立てだ。 また、石破政権は少数与党で政権基盤が盤石ではないため、中国として得られる成果を早めに得ておきたかったという見立てもある。 ただ、決して楽観できる状況ではない。前述した東シナ海の問題や、邦人拘束の問題、さらには新しく発覚したブイの問題など、日中の間には依然として課題が山積していて、解決の道筋が見えていないものも多いからだ。 その上に2025年は、終戦から80年の記念の年に当たる。中国からみると「抗日戦争勝利80年」で「歴史問題」に再び焦点があたる可能性がある。毎年行われている「南京事件」の式典などに加え、軍事パレードの開催なども予想される。今回の外相会談についても中国側の発表では、岩屋大臣が歴史問題について「深刻な謝罪と反省を表明した」と強調されたが、その後「正確ではない」と日本側が申し入れを行う事態となっている。 このように先行きに懸案はまだ山積しているが、それでも大切なことは対話を継続することだろう。 別の日中関係筋は「対話を続けることで、五里霧中だった問題にも道筋が見えてくる」と強調した。「最も早い適切な時期」で合意した次の王毅外相の訪日から、さらに首脳レベルの往来へとスムーズに進めていけるかが、まずは2025年の焦点だ。
テレビ朝日