「心に残る1勝」4年ぶり全日本復帰の女子ボクサー濱本紗也が逆転で1回戦突破…ドーピング違反による2年出場停止のブランクを残り越えて
アマチュアボクシングのパリ五輪世界予選の代表選考会を兼ねた全日本選手権の第3日が23日、東京の墨田区総合体育館で行われ、女子フェザー級では濱本紗也(24、イワサ・アンド・エムズ)が、全日本では4年ぶりの復活リングに立ち、優勝候補の一人だった田中鈴華(23、クリエイティブサポート)に4-1判定で勝利、準決勝へ駒を進めた。ドーピング違反による2年間の出場停止処分を受けていた濱本にとって心に残る感動の1勝となった。 【画像】 「お尻に注目」スポーティな白黒コスチュームのラウンドガールが世界戦に華を添える
声援が力になった
みんなの声が聞こえた。 「前へ行け!」 「ストレートが当たるよ」 「ここからだよ。勝てるよ」 3分3ラウンドで行われるアマチュアボクシング競技は、公平を期すために毎ラウンドごとに5人のジャッジの採点が公開される。 第1ラウンド、濱本は、サウスポースタイルの田中の徹底したステップワークとアウトボクシングに翻弄された。左ストレートを何発か被弾して5人中4人が10―9と田中を支持していた。田中とは、過去に2度対戦していて、3年前の全日本の決勝では勝っているが、東京五輪の金メダリスト入江聖奈を生んだ鳥取のシュガーナックルジムの門を叩き、連盟の女子強化委員会委員長を務める伊田武志氏の指導を受けて、そのファイトスタイルは変わっていた。 「想定はしていましたが、ここまで動くとは。ちょっと見過ぎて後手になりました。途中採点も聞きましたが、それ以上の声援があって、自信を持って2ラウンドにいったんです。みんなの声が背中を押してくれました。体力も十分に残っていたし中に入れると思いました」 第2ラウンドを取られれば、その時点で勝利はほとんど絶望的となる。 だが、その時、日大統括コーチの藤原俊志、母校の先輩で一時期ジムで練習させてくれたRK蒲田ジムの柳光和博会長、そして社員として働いている建築塗装関係の会社イワサ・アンド・エムズの増田聡明社長、以下、約30人の大応援団の声がしっかりと聞こえた。その声に後押しされて勝負の第2ラウンドで濱本は見事な切り替えを見せる。 時計周りにステップを踏む田中を平行に追いかけて詰める。日大がマスボクシングで教えるアウトボクサー対策の基本。そこからワンツーを叩き込み、右のストレートから入る逆のコンビネーションブローも、サウスポーには効果的で田中の足を封じて圧倒した。 5人のジャッジが濱本を支持。ポイントをほぼ五分に戻したが、田中のスタミナは切れているように見え、それ以上の勢いを濱本はつかみ形勢は逆転した。 「もっとどんどん手を出していこう」 運命の第3ラウンドも濱本が前に出た。プレッシャーをかけてのワンツー。田中も左右のパンチを繰り出してくるが、ボディワークでそのパンチを外してショートの右がカウンターとなった。試合終了のゴングが鳴ると、濱本は右手でガッツポーズを作ってコーナーに帰った。 ロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級王者になった村田諒太の母校でもある名門の南京都高(現・京都廣学館高)出身で、日大に進み、全日本のバンタム級、ライト級で優勝経験があるが、ガッツポーズをしたのは初めてだという。 「勝ったという自信と、応援してくれた方々にお返ししたいという気持ちで無意識のうちにしていました」 場内アナウンスは4-1の判定で濱本が勝利したことを伝えた。第3ラウンドも4人のジャッジが濱本を支持していた。 「こんなに感情を出したのはボクシング人生で初めてです。試合のことも、どう戦ったかもハッキリと覚えていないんです。2戦目をできることのうれしさ、楽しさもあります。何よりほっとしました」
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