「認知症かも?」と感じた時に、本当に受けるべき診断はコレ! 早めに受けるべき?本人に結果は伝えないほうがいい?【山田悠史医師】
診断のプロセス
それでは次に、どのように認知症の診断が行われていくのかを見ていきましょう。 まず、認知症の評価には詳細な情報収集が必要となり、通常の診察時間では完了できないことも多いため、初回に長めの診察時間を設けたり、後日の再診が必要になったりすることも稀ではありません。それは時間の無駄で、手っ取り早い検査が一番と思われるかもしれませんが、正確な診断や原因の追求のためには、これこそが最も重要なプロセスになります。 患者さんには、家族や親しい友人など、普段の様子をよく知っている方に同行してもらうと良いでしょう。これにより、患者さんが自覚していない症状を伝えたり、医師からの説明を一緒に聞いて覚えておく手助けができたりします。
診断の最初のステップは、医師による問診です。どんな経緯で病院を受診するに至ったかを確認します。日常生活での活動についても伺い、以前できていたことと現在の能力を比較します。例えば、仕事、お金の管理、社会活動、運転、家事などの様子を伺っていきます。 また、視力や運動機能の変化、震え、体のバランス、歩行の様子、排尿の様子、性格の変化、睡眠、アルコール摂取の様子などについても確認します。うつ病は認知機能に大きな影響を与えるため、うつ症状がないかも必ずチェックをします。うつ病が原因で認知症のような症状が現れることもありますし、認知症の患者さんがうつ病を併発して症状が悪化することもあるからです。 家族や親しい人からの情報も重要で、認知症の症状や行動の変化について詳しく教えてもらいます。また、薬の履歴も大切で、特に認知機能に影響を与える可能性のある薬(抗アレルギー薬や睡眠薬など)の使用について確認します。 認知症の症状は多くの場合ゆっくりと現れるため、患者さんや家族もいつから始まったのかはっきりしないことも少なくありません。「いつ最初に物忘れに気づきましたか?」と質問すると、受診された時点で、すでに症状が数年続いていることも全く珍しくありません。 認知機能のテストでは、記憶力や注意力、言語能力などを評価します。簡易的なテストとして、ミニメンタルステート検査(MMSE)やモントリオール認知評価(MoCA)などがよく知られています。これらのテストは、特別な検査機器を必要とするものではなく、すべて医師とのコミュニケーションで完結するものです。しかし実際、この検査は高い診断の精度を持っていることが知られています(参考文献12)。 こうした患者さんやご家族のお話を総合して、最終的に認知症の診断の可能性を高めていくことになります。ここまで、血液検査のようないわゆる「検査」が全く登場していないことにお気づきでしょうか。実際のところ、このような対話が最も大切なプロセスなのです。 また、診察中の対話は、医師と患者さんの信頼関係を築く機会でもあります。安心感を持ってもらうことで、その後のテストや評価に対する不安を和らげることができます。逆にこうしたプロセスなく検査だけ受けても、信頼関係は十分に構築されず、結果を受け入れにくいかもしれません。 前回記事「社会人になっても「勉強する人」「しない人」の差は、将来の認知症リスクに表れる!【山田悠史医師】」>>
山田 悠史