<解説>「虎に翼」寅子を演じきった伊藤沙莉の“すごさ” 「立っているだけでも感情が見える」圧巻の演技力
伊藤沙莉さんが主演を務めたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」(総合、月~土曜午前8時ほか)が、9月27日に最終回を迎えた。女性の生きづらさや性的マイノリティーなど、さまざまな社会問題を丁寧に描いた脚本がたびたび話題になったが、真っすぐで芯の強い主人公・寅子の魅力が、物語の面白さをより一層際立たせていたように思う。そんな寅子を生き生きと演じきった伊藤さんの“すごさ”とは? 脚本家や制作統括の言葉から、ひもといてみた。 【写真特集】“ヒャンちゃん”ハ・ヨンスがまるで別人? 伝説のグラビア!
◇年を重ねた寅子を自然に演じ分け
伊藤さんは1994年5月4日生まれ。9歳のころに子役としてキャリアをスタートさせ、2005年放送の連続ドラマ「女王の教室」(日本テレビ系)などの話題作にも出演。制作陣の間で高い評価を得てきたが、その名前が広く知られるようになったのは、2017年度前期の朝ドラ「ひよっこ」以降だろう。さまざまな作品で主要なキャラクターを演じることもあった伊藤さんだが、「ひよっこ」で彼女の存在を知り、その芸達者ぶりに魅了された人も多いはずだ。
その後も、数々の話題作に出演し、抜群の存在感を放ってきた伊藤さん。そんな伊藤さんが「虎に翼」で演じた寅子は、男性ばかりの法曹の世界に足を踏み入れ、愛する人たちとの別れを経験しながらも、常に弱い立場にある者を尊重し、正義を貫いてきた女性だ。「はて?」が口癖の好奇心旺盛な寅子は、年齢を重ねても決して自分を曲げず、丸くならない。大人になっても、いい意味で根底の部分が“変わらない”キャラクター造形が魅力だったように思う。
歴代の朝ドラでは、主人公の幼少期を描く場合は子役が演じ、その後、主演俳優と交代するケースが多いが、「虎に翼」は、スタート時点で寅子が18歳だったこともあり、伊藤さんが第1回から最終回まで、その人生を見事に演じきった。女学生の寅子が法律を学び、弁護士を経て、裁判官になっていく間に、少しずつ年齢を重ねていくさまを、自然に表現していた。