<解説>「虎に翼」寅子を演じきった伊藤沙莉の“すごさ” 「立っているだけでも感情が見える」圧巻の演技力
本作の脚本を務めた吉田恵里香さんは、伊藤さんの演技について「大人になった寅子の演技がすごくいい」と評し、「大人っぽくなりすぎない、やりすぎない自然な演技で、口調は若々しいけれど、所作やまなざし、ほほ笑み方で年齢を演じ分けていらっしゃる。完パケをもらって見るたびに、その繊細な演技に驚かされます」と語っていた。
◇コミカルからシリアスまで 「演技の幅がものすごい」
寅子といえば、豊かな表情も魅力の一つ。重厚なテーマを扱いながらも、最後まで暗い気持ちにならずにドラマを楽しめたのは、伊藤さんのコミカルな演技も要因になっていたように思う。伊藤さんのくるくる変わる表情や、思い切りのいい“変顔”に心を掴まれた視聴者も多いことだろう。
表現力豊かな伊藤さんについて、吉田さんは「しゃべりの演技はもちろん、立っているだけでも感情が見えてしまうような空気感が素晴らしい。一方で、喜怒哀楽を表情だけで“芸”に達するぐらい豊かに演技をされていて、演技の幅がものすごい」とたたえた。
本作の制作統括・尾崎裕和さんは、2022年放送のNHKの特集ドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」で、伊藤さんとタッグを組んだ経験を持つ。昨年2月、「虎に翼」の制作が発表された際には、伊藤さんについて「ずっとこの人を見ていたいという気持ちにさせてくれた俳優」「本当に素晴らしいお芝居をする人」と絶賛していた。
「物語は明るくて、楽しいことばかりではないのですが、そんな中でも寅子は前向きで、チャーミングで、明るいというイメージで考えています。(合うのは)“伊藤さんしかいない”と思い、オファーさせていただきました」と起用理由を明かしていたが、その言葉通り、伊藤さんが演じた寅子はまさにハマり役だった。時にコミカルに、時にシリアスに、寅子の心情を丁寧に演じ、視聴者を画面にくぎ付けにした。
昨年9月にクランクインし、約1年にわたって、寅子を演じてきた伊藤さん。「虎に翼」は終わりを迎えたが、チャーミングでかっこいい寅子の姿は、いつまでも心に残り続けることだろう。今後も、さまざまな役に挑戦するであろう伊藤さんの活躍に注目したい。