マンホールトイレ、熊本県内で整備進む 震災を機に12市町で計536基 自治体の優先度などでばらつきも
◆据え付け方法や使い方、防災訓練などで周知 熊本市 2016年の熊本地震では、熊本市が初めてマンホールトイレを活用し、利用者から「洋式なので使いやすい」「段差がなくて安心」との声が聞かれた。地震を受けて県内自治体で設置が進むが、災害時に住民がスムーズに利用できるかどうかも課題。熊本市は地域の防災訓練などを通して、据え付け方法や使い方の周知を図っている。 1日で発生から5カ月となった能登半島地震の被災地では、避難所のトイレで流す水が不足したり、道路の寸断で仮設トイレの配備が遅れたりした。トイレを我慢することで健康を損なう恐れもあり、切実な問題だ。 熊本市は、熊本地震の翌年から毎年実施している震災対処訓練を通じて、マンホールトイレの設置方法を広めている。昨年11月の訓練では39カ所の指定避難所で実施。設置マニュアルの動画を基に地域住民や市職員らが実際に組み立て、手順を確認した。 東区の桜木中で訓練した桜木東校区自治会の川村洋介副会長(76)は「非常時は混乱するので、避難所を担当する市職員だけでなく住民の協力が欠かせない。住民への周知も徹底してほしい」と話す。
設置方法は専用のマンホールのふたを開け、汚水飛散防止シートを敷いて便座を置く。くぎなどで固定した後、テントで便座を覆う。4人で15分程度で設置できるという。必要な器具一式は指定避難所にある防災倉庫に常備している。 市は熊本地震での利用者の声を基に、高齢者や子どもが使いやすいよう、部材を軽量化し座る位置を低くした便座を配備しており、覆いのテントにはトイレットペーパーのフックを取り付けた。 市下水道維持課の日高輝課長は「設置の支援を今後も続けつつ、まずはマンホールトイレの存在を広く知ってもらい、混乱せずに設置できる体制を作ってもらうことが大切」と話す。(上村彩綾)