元メルカリ幹部がタクシー業界に乗り込んだ事情 「何度も壁にぶち当たって絶望した」
宮崎 岸交の案件は、先進的な考えを持つ同社トップと偶然にもつながることができ、そういったラッキーな出来事が重なった。1月中旬ごろに詳細を詰め始めて、2月中には話がまとまった。 このスピード感は特殊だと思うので、もう少し(M&A1件ごとの)時間はかかるだろう。 ■M&Aなどでタクシー車両数3000台へ ――今年は何社に出資・買収をする、などといった目標は? 青柳 目標という形では置いていない。会社設立からこの4カ月間で資本参加を1件行ったわけだが、買って終わりではなく、その後も現場でご一緒して、しっかり経営していくことを考えると、最初は(多数のM&Aを)同時にはできない。
今年は資本参加した岸交や、今後(M&Aを)広げていった先のタクシー会社の経営改善を中心に取り組むことになると思う。 宮崎 タクシー会社は規制の関係からか、オーナー一族が営業地域ごとに複数の法人を立て、「連結ではないファミリー経営」をしていることが多い。ただ、それ以外に大きな特殊性はなく、いろんなジャンルの会社をM&Aしてきた経験が生かせていると感じる。 5月には、サイバーエージェントで一緒にベンチャー投資をしていたメンバーもnewmoに加わった。まだ表には出せないが、新たなM&Aのパイプラインは存在する。M&Aはもちろん、(マイノリティなどで)資本参加するなど、いろんな選択肢を組み合わせ、2025年度までにタクシー車両数3000台という目標を達成したい。
――一方で、ライドシェアの全面解禁に向けた議論は足元でスローダウンしている印象です。全面解禁までに想定よりも時間がかかるとなると、焦りはありませんか。 青柳 ライドシェアは社会にとって必要なもので、議論をしてくださる方々もいる。全面解禁のタイミングがいつなのかはわからないが、社会にわれわれが必要とされていると信じて、「それまでどうにかサバイバルするぞ」という、ある種の信念でやっている。 それと同時に、M&Aをしたタクシー会社をしっかりと経営していく。タクシー事業はめちゃくちゃ利益率が高いというわけではないが、もっと効率的にできる部分も多いので、しっかりとした利益を生み出せる構造に変えていく。
タクシー事業以外にも、ライドシェアサービスを行うためのアプリ開発なども行っているので、経営していくうえでは胆力が必要だ。
村松 魁理 :東洋経済 記者/森田 宗一郎 :東洋経済 記者