元メルカリ幹部がタクシー業界に乗り込んだ事情 「何度も壁にぶち当たって絶望した」
青柳 実は2017年に、仲間を集めてライドシェアをやろうと構想したことがある。グリーを辞めてからメルカリに入るまでの空白期間で、二種免許も取得した。そういった経験から、私はずっと業界新聞を購読したりして、タクシー業界をウォッチしていた。 昨夏に、菅義偉前首相が長野県でライドシェアに対して前向きな発言をしたという記事を読んで、「えっ、本当に?」と驚いた。そこから小泉進次郎元環境相や河野太郎デジタル相など、他の政治家も議論をするようになってきた。たまらなくなって、政治家の方々に会いにいった。お考えをうかがい、ちょうどそのタイミングで「起業する」と決めていた。
普及、浸透してから事業を始めるのではなくて、「普及するかもしれないな」という段階から走り出すと、最も使われるサービスになりうる。完全なリスクテイクではあるが、「もしかしたらライドシェアがついに来るのかも」と感じた。コロナ禍があってタクシードライバーの数が減ったという背景などから、自分なりの確信があった。 ――現状、日本版ライドシェアの運送主体はタクシー会社に限定されています。newmoはライドシェア事業に参画するため、3月には岸交への出資を発表しました。タクシー業界に参入する難しさはありませんか。
青柳 これは批判ではなく現状認識として、タクシー業界は極めて参入障壁が高く、閉鎖的だ。家業としてタクシー会社を代々やられてきた方が多く、昔からのベースもあるので、入っていくのはなかなか難しい。 何度も壁にぶち当たって絶望した。「今さら新しい配車アプリなんてありえない」と言われて門前払いを食らうのが去年までだった。しかし、そんな状況がこの半年でだいぶ変わってきたと思う。 すでに各地域で、限定的ではあるがライドシェアが始まっていて、タクシー会社の方々は「ライドシェアはいずれ解禁されていくものだよね」と少しずつ覚悟を決められている。以前は話を聞いてもらえなかった会社でも、話をしてくれるようになってきた。