「濃すぎる1年ですね」2回連続代表“追加招集”の男・関根大輝は重圧のたびに成長する…目標「プレミア、CL、W杯」へ「全てを出し切ります」
試合中に逆側の相手選手を観察
関根の“大物ぶり”がうかがえるエピソードがある。 必死になって戦いつつも、視野は広く保っていた。というのも対角線にいる、つまりは自分の位置から最も遠いスペインの右サイドバック、マルク・プビルのプレーがどうしても気になってしまう彼がいた。 「身長が僕よりちょっと高いくらいで、プレーもビルドアップを特長としていてどこか似ているなと感じました。目立っていたのでどうしても(視界に)入るんです。ワンタッチのパスだったり、自分で運んで剥がすプレーだったり……(日本の左サイドの守備が)ハメたなと思った場面でもあの選手に外されてしまった場面もあって、“うまいな”って思いました。ミスもまったくしないし、凄く参考になるなって。 試合が終わった後、彼のことを調べてみたら、2部に降格したアルメリアの選手で自分よりも年下。結局、(噂されたステップアップの)移籍はなかったけど、ちょっと注目されていたので、こういう選手が上に行くよなって思いましたね」 これは、参考になる――。成長するためのアンテナを常に張りめぐらせているから、彼は1試合のなかで才を伸ばすことができるのだと言えまいか。 世代別でずっと代表に選ばれたわけではなく、国際経験もはっきり言って乏しい。それでも緊張感なく自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるのはなぜか。 その疑問をぶつけると、関根は口もとに柔らかな笑みを浮かべて言った。 「いや、試合前にちゃんと緊張はしているんです。でも試合になったら吹っ切れる感じがあって。別にここでサッカー人生が終わるわけではないし、とにかく自分の今持っているものを全部出そうと。極限まで緊張する試合って、アドレナリンが出ているのもあるんでしょうけど、リミッターが外れるんです。そうなると限界以上のものを出せる気がします。あのときもそうでしたから」 あのとき――。
限界以上のプレーが出たという感覚
今春に行なわれたパリオリンピック出場権が懸かるU-23アジアカップ。準々決勝は開催国カタールとの対戦だった。負ければ本大会行きを逃がすことになるという重圧に関根自身、ドが付くほどの緊張状態だったという。カタールを延長の末に撃破し、勢いづいた日本は優勝にたどり着くことになる。 「前の試合で韓国に負けていたし、開催国との対戦、負けたら終わりっていろんな状況もあって、チーム自体ピリついていました。でも試合に入ったら緊張よりもアドレナリンが出まくって、延長に入ってもありえないくらい走れたんです。相当な走行距離だったにもかかわらず、足がつるとか、そういう気配も全然ない。それでいて冷静にプレーできていて、限界以上のものが出せているっていう感覚もあった。スペイン戦もまさに同じでした」 ド緊張の先に待ち受ける、心が震える場所。不安に支配されるのではなく、逆に「全部出そう」と吹っ切ることができる。 どんなことも自分にとってはチャンスになる。サイドバック転向もまさにそうだった。 静岡学園ではセンターバックを務め、サイドバックになったのは拓殖大1年時のリーグ戦後期から。未経験のポジションを、紅白戦でいきなり告げられたという。 「ちょいちょい“サイドバックやれるか? ”みたいに軽く聞かれたことはあって“やったことはないけど多分やれます”みたいな話はしていました。センターバックには不動の先輩2人がいて、その人たちが卒業するまでは難しいのかなと思っていたんです。そんなとき紅白戦で右サイドバックに急に入ることになったら、アシストできて案外プレーが良くて。もうそこからはずっとサイドバックで使われるようになりました。楽しいなって思いましたね。攻めにも行けるわけですから」 前向きに切り替えられるマインド。 187cmの長身サイドバックは足もとの技術もあり、スピードもあって頭角をあらわしていく。全日本大学選抜に選ばれ、パリオリンピック代表を率いる大岩剛監督の目に留まる。3年時の5月には柏レイソル加入が早くも内定。翌月の欧州遠征に初めてU-22日本代表メンバー入りして試合にも出場し、オリンピックが現実目標になった。そのステージに上がったら、そこで満足するのではなく意識をそのレベルに合わせられるのが関根の良さである。
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