史上最高レベルの男子100m 「リオ五輪代表」をゲットするのは誰だ!?
桐生か、それとも山縣か。はたまたケンブリッジ飛鳥か。 「9秒台」が目前に迫った男子100mの“日本人対決”は、6月24~26日に行われる日本陸上競技選手権でクライマックスを迎えようとしている。 日本選手権は今年が第100回のメモリアルで、しかもリオ五輪代表トライアル。五輪参加標準記録「10秒16」を桐生祥秀(東洋大)、山縣亮太(セイコーホールディングスAC)、高瀬慧(富士通)、ケンブリッジ飛鳥(ドーム)の4名が突破するなど、男子100mのレベルは高騰している。 なかでも注目すべきは「山縣vs桐生」の対決だ。4年前のロンドン五輪で当時20歳の山縣が日本人五輪最高の10秒07で駆け抜けると、翌年に当時17歳の桐生が度肝を抜く10秒01をマーク。日本陸上界にとって悲願ともいえる「9秒台」への期待が一気に高まった。 3年前の日本選手権は山縣が、2年前の同大会は桐生が「日本一」に輝くも、記録のうえではふたりとも“停滞”する。そして、昨年の日本選手権は山縣が準決勝を棄権、桐生はケガのため欠場した。それが今季は両雄とも上昇カーブを描いて激突するのだ。 山縣は近年悩まされてきた腰痛が完治して、シャープな動きを取り戻した。4月29日の織田記念を10秒27(-2.5)で制すと、5月8日のゴールデンGP東京は10秒21(-0.4)で桐生(10秒27)に先着。5月21日の東日本実業団選手権は準決勝で10秒08(+2.0)をマークしている。 そして、6月5日の布勢スプリントで両者は二度に渡って火花を散らした。第1レースは桐生が10秒21(-0.6)で先着して、山縣が10秒23。第2レースは山縣が4年ぶりの自己新&日本歴代5位となる10秒06(-0.5)で突っ走り、10秒09の桐生を退けている。 向かい風のコンディションで日本人ふたりが10秒ヒトケタで走ったという事実は衝撃だった。100mは風速0.1mにつき0.01秒の影響を及ぼすといわれており、追い風0.5m以上のレースになっていれば、ふたりとも9秒台でフィニッシュしていた可能性があるからだ。 ふたりの特徴を比べると、山縣は「序盤の加速」、桐生は「中盤の爆発力」が持ち味。終盤の走りに関しては、山縣の方が1枚上手だ。今季は桐生に2勝1敗という成績を残していることもあり、「日本選手権は9秒台を出して優勝する」と宣言するほど、山縣には王者の風格が漂っている。 一方の桐生は4月2日の米国・テキサスリレーで優勝をさらうも、今季は向かい風に記録を阻まれてきた(7レース連続で向か風)。それでも今季初めて追い風になった6月11日の日本学生個人選手権で、ようやく笑顔を見せた。準決勝で10秒01(+1.8)をマーク。劇的な快走から3年という月日を費やして、日本歴代2位の自己ベストに並んだのだ。 「うれしさ半分、悔しさ半分。上がってきているので、自分としてはいい感じだと思います」と桐生。山縣に敗れたレースは終盤に上体が反って自滅したが、日本学生個人では課題にしていた「中盤以降の動き」を確認して、自信を復活させた。「日本最速は自分だと言われたい」とリターンマッチに意欲をみなぎらせている。