史上最高レベルの男子100m 「リオ五輪代表」をゲットするのは誰だ!?
前年の日本選手権を制した高瀬は左膝に不安を抱えていることもあり、得意の200mに絞る方針。また2位で、昨年の世界ユースで100m、200mの2冠を奪っていたサニブラウン・ハキーム(城西高)は、左大腿部違和感のため欠場を発表、リオ五輪出場が消滅してしまったが、ここにきて“3番目の男”としてケンブリッジ飛鳥(ドーム)の評価が急浮上している。 ケンブリッジはジャマイカ人の父を持ち、春に日本大を卒業したスプリンター。身長1m80cm、体重76kgのボディは、体脂肪率4.4%と研ぎ澄まされている。今季は東日本実業団選手権の予選で日本歴代9位の10秒10(+0.7)をマーク。「東日本実業団選手権のように前半からスムーズに加速できれば、勝てるチャンスはある。トップスピードに到達する60~70mで先頭に立ち、優勝してリオ五輪を決めたい」と話している。 五輪代表は最大「3枠」。陸上の日本代表選考は少々複雑で、日本選手権での「即内定」は次の2パターンとなる。「派遣設定記録突破+日本選手権で入賞(8位以内)した最上位」と「参加標準記録突破+日本選手権で優勝」だ。それ以外は日本選手権終了後の選考会議で審議され6月27日の日本陸連理事会で決定される。 派遣設定記録「10秒01」を突破しているのは桐生だけで、参加標準記録は桐生、山縣、ケンブリッジ、高瀬がクリアしている。桐生は8位以内でも「即内定」となり、順当なら山縣とケンブリッジも代表に選出される公算は高い。だからといって彼らが“安全運転”をするとは思えない。日本最高峰のレースを制することは、9秒台への“ファストパス”。スプリンターとしてのプライドが交錯しているからだ。 しかし、残念なことがひとつある。それは「風」だ。第100回大会の会場は愛知・パロマ瑞穂スタジアム。6月後半の同競技場は、スプリント種目にとって厳しいコンディションになることが多い。2年前の同時期(6月20~22日)に行われたインターハイ東海大会では、男女トラックの決勝レースがすべて向かい風だった。特に直線勝負の100mは風の影響を強く受ける種目だけに、タイムが良くなくてもガッカリしないでほしい。 ただいえるのは山縣と桐生、それからケンブリッジらが激突するレースは、間違いなく史上最高レベルになる。その名勝負は絶対にドラマチックだ。そして、彼らが向かう先には、確実に“9秒台”という世界が待っている──。 (文責・酒井政人/スポーツライター)