ChatGPT開発元の「著作権問題」を内部告発...元研究者が自宅で死亡
<ChatGPTの開発元、米オープンAIの元研究者スチール・バラジ氏(26歳)が11月26日、サンフランシスコの自宅で遺体で発見された。バラジ氏は、AIの著作権問題を内部告発していた人物だった>
人工知能(AI)チャットボットを運営する米オープンAIの元研究者で、著作権法に対する同社の姿勢について内部告発していたスチール・バラジ(26歳)が11月26日、サンフランシスコの自宅で亡くなっているのが発見された。地元当局は自殺と見ている。 【動画】AIが人間をロックし正確に狙う銃 サンフランシスコ市警察は、バラジが市内ブキャナン・ストリートにある自宅アパート内で死亡しているのを発見したと発表した。地元紙マーキュリー・ニュースによると、警察は、11月26日午後1時に通報を受けて安否確認に訪れ、バラジを発見したという。 ここ数年で、大規模言語モデル(LLM)を利用してユーザー向けにコンテンツを生成するAIチャットボットの性能が飛躍的に向上した。そうしたチャットボットの代表格が、オープンAIのChatGPTだ。しかし、その学習プロセスについては論争が起こっている。新聞社など一部のパブリッシャーは、オープンAIが許可なく著作物を使用していると非難し、訴訟も多数起きている。 本誌は、通常の営業時間外である土曜日に、オープンAIにメールでコメントを求めた。 サンフランシスコ市監察医務局は、バラジの死因を自殺と断定したと発表した。警察は今週に入ってから、「現時点で他殺の証拠は見つかっていない」と述べた。 バラジは、2020年に研究者としてオープンAIに入社したが、2022年になるころには、著作権法に対する同社の姿勢を危惧するようになった。 バラジは2024年10月23日、X(旧ツイッター)にこう投稿していた。「私はオープンAIで4年ほど働き、最後の1年半はChatGPTに携わった。はじめのうちは、著作権やフェアユース(公正使用)といったことについて詳しくなかったが、生成AI開発企業を相手取った訴訟が多数起きているのを知り、関心を持つようになった。 「この点について理解を深めようとするうちに、私は次のような結論に至った。多くの生成AI製品に関しては、フェアユースだという抗弁は妥当ではないように思える。そのいちばんの理由は、生成AIは、自らが学習したデータと競合する代替物を作り出すことができるからだ」 バラジは続けて、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された自身のインタビュー記事を共有した。同紙は現在、自社の著作権を侵害されたとしてオープンAIを提訴している。 このインタビューの中でバラジは、自分は当初、AIについて、病気の治療や老化の防止といった「解決不可能な問題を解決するために活用できる技術」と考えていたと語っていた。しかし時間が経つにつれ、著作権法に対するオープンAIの姿勢に幻滅するようになったとし、こう言った。「もしあなたが自分と同じ考えなら、同社を去るしかない」 バラジは、個人のブログに論文を掲載し、オープンAIがChatGPTでやっていることは著作権のフェアユースだという抗弁は有効ではないという考えを示した。そのうえで、「同様の主張は、幅広い領域における生成AI製品の多くで成り立つだろう」と指摘していた。 オープンAIは先ごろ、裁判所に提出した文書の中で、自社のビジネス手法についてこう弁護している。「当該モデルは、われわれ人間すべてと同じように、過去から学んでいる」 「フェアユースという抗弁は、まさにそのために存在している。つまり、過去のアイデアを土台にして新しいアイデアを展開することを奨励し、許可するためだ」 ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所の判事コリーン・マクマホンは11月17日、ニュースサイトのRaw StoryならびにAlterNetがオープンAIを相手に起こした訴訟を棄却した。 オープンAIは2015年、熱心な技術信奉者たちによって設立され、その一員だったサム・アルトマンとイーロン・マスクが共同議長になった。しかし、マスクは2018年、戦略を巡る食い違いを理由に離脱。2024年2月にはオープンAIとアルトマンを提訴した。
ジェームズ・ビッカートン