賑わす去就…J1での手腕は「高く評価されていい」 退任決定の指揮官で「トップクラス」【前園真聖コラム】
元日本代表の前園真聖氏が気になるJ1福岡退任監督の進路
2024年の日本のサッカーシーンも終わりに近づき、選手や監督の去就動向が話題になっている。無念の思いを持ちながらクラブを去る者もいれば、新たなステップのためにあえて一歩踏み出す人物もいる。たくさんの人間ドラマが繰り広げられている今、元日本代表の前園真聖氏には今後の進路がとても気になる人物がいるという。その人物について語ってもらった。(取材・構成=森雅史) 【一覧リスト】Jリーグが公式発表 全60クラブの契約満了・移籍情報まとめ ◇ ◇ ◇ 2024年のJリーグも終盤を迎え、いろいろな選手・監督・スタッフの来季に向けた動向が明らかになってきています。引退する選手もいれば職を辞する監督やスタッフもいて、それぞれいろいろなドラマが生まれる時期です。 たくさんの人たちの今後が気になるところですが、その中でも特に僕が注目している人物がいます。 それは今季限りでアビスパ福岡の監督を退任することが決まっている長谷部茂利監督です。最後のホームゲームだった浦和レッズ戦もしっかり1-0で勝利を収め、多くのサポーターに惜しまれている姿を見て、本当にいい仕事をしていたのだと再確認しました。 長谷部監督は新型コロナウイルスの影響が広がり始めた2020年にJ2だった福岡の監督に就任すると、守備を整備して前年度J2で16位だったチームを浮上させます。そしてその年、リーグ最少失点で首位の徳島ヴォルティスと同勝点の2位に入り、見事J1昇格を果たしました。 それだけではなく、それまではエレベーターチームと言ってよかった。J1に昇格してはすぐ降格していたチーム力を安定させ、2021年には8位でJ1残留を果たしました。2022年は14位と苦しみましたが、2023年には7位まで浮上させ、さらにルヴァンカップで初優勝を果たしています。 福岡は決して予算に恵まれたクラブではありません。2023年のJリーグが公表している「クラブ決算一覧」を見ると売上高はJ1クラブの中で下から数えたほうが早いほうですし、チーム人件費もJ1リーグ平均を7億円ほど下回っています。その中での選手のやりくり、補強などは本当に大変だったでしょう。 それでもチームをしっかりJ1に定着させただけではなく、クラブに初タイトルまでもたらした指導力は高く評価されていいはずです。今年クラブを離れるたくさんの監督の中でもトップクラスではないでしょうか。 福岡の監督に就任して5年が経ち、本人もそろそろ別の道を考えたくなったでしょうし、クラブもさらなる成長のために監督を交代させるというのはよく分かります。ですから今年でクラブを去るという決断は、今後のためにどちらにも必要だったのだと思います。 そんな優秀な監督が次はどこで指揮を執るのか。福岡では現実的な戦い方でチームをJ1に定着させてきましたが、本当はもっと攻撃的なサッカーを志向しているのだと思います。次のクラブでどんなサッカーを見せてくれるのかが楽しみです。 実は、長谷部監督とは1997年にヴェルディ川崎でチームメイトでした。当時は中盤にラモス瑠偉さん、北澤豪さんなどがいて、なかなか長谷部監督の出場機会はなかったと思います。それでも安定した玄人好みのいぶし銀のプレーがとても印象的な選手でしたし、何より周りがよく見えていたプレーヤーでした。 だから今も長谷部監督が指揮する姿を見て当時のことを思い出します。次の進路がどこになるにせよ、現役時代のスタイルそのままに、今後もみんなを唸らせるチームを作ってくれることを期待しています。 [プロフィール] 前園真聖(まえぞの・まさきよ)/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。
前園真聖 / Maezono Masakiyo