年収430.7万円…国家資格の「理学療法士」の給与が“日本の平均年収”より低い残念なワケ【医師が解説】
理学療法士は「昇給が見込めない」
気になる報酬についてですが、理学療法士の平均的な年収は430.7万円と報告されています(厚生労働省職業情報提供サイトjobtag「理学療法士(PT)」)。日本の平均年収は457.6万円といわれていますから(国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査)、一般的な理学療法士の年収は、現時点で日本の平均年収よりも低いのです。 理学療法士には「夜勤」がないため、他の医療・福祉分野の職種と比較すると手当が少ないとう事実はあります。しかしそれ以上に、報酬体系の「制約」が理学療法士の昇給を阻んでいるのです。 医療保険制度内で行われるリハビリテーションは、「リハビリ単位」と呼ばれる時間単位に基づいて実施されます。1単位20分で、これに基づいて1日や1ヵ月で実施できるリハビリや、保険申請できるリハビリの単位数が定められているのです。 また、リハビリテーション料は疾患や施設のレベルに応じて異なります。 たとえば、脳血管疾患のリハビリテーション料は、区分1で1単位あたり245点(2,450円)、区分2は200点(2,000円)、区分3は100点(1,000円)となります。 一方、廃用症候群※のリハビリテーション料は、区分1で1単位あたり180点(1,800円)、区分2は146点(1,460円)、区分3は77点(770円)となっています。 ※ 廃用症候群……長いあいだ安静状態が続くことによって起こる、心身の機能低下のこと。 このように、理学療法士が行うリハビリテーションの報酬体系は「時間も金額もきっちり決まっている」という状況です。そのため、リハビリテーションの効率化には限界があります。 たとえ経験年数が上がり、効率的にリハビリを行えるようになっても、単位数に上限が設けられているため、理学療法士が生み出せる売り上げは一定に保たれます。つまり、診療報酬の増加はあまり見込めません。これが給与の頭打ちの原因のひとつとなっているのです。