年収2000万円越え、GS勤務の娘に「絶対に辞めるな」と言った父親…明らかになる「壮絶な過去」
世界トップクラスの地位と報酬が約束されたゴールドマン・サックス。だがその実態は、金と女性に対するおそるべき強欲、嫉妬にまみれた職場だった――。 【マンガ】「一緒にお風呂入ろ」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性の罪悪感 同社の元マネージング・ディレクター(上位8%の幹部職)の女性が1998~2016年の在職期間に目撃した、ミソジニー(女性嫌悪)と人種差別にあふれる、堕ちた企業風土を明らかにする衝撃の暴露本『ゴールドマン・サックスに洗脳された私』から、一部内容を抜粋してお届けする。 巨額の退職金を捨てて、秘密保持契約書(NDA)へのサインを拒否。同社の内幕を告発する道を選んだ彼女の回顧録を読み進めるうちに明らかになる、金融資本主義の欺瞞と、その背後にある差別的な思考とは?
恋人だけは暮らしぶりに口をはさまなかった
周りの人たちは私の生活と仕事を見て、何かしら口をはさんできた。両親も、きょうだいも、友だちも、向かいに住んでいる女性でさえも。でも、ダンだけは違った。私たちは姉の会社のクリスマス・パーティのあとすぐに付き合いはじめ、彼はたちまち私の親友になった。彼は自分の意見を押しつけるような人ではない。解決策を示すのではなく、じっくりと話を聞いてくれる。私が仕事のグチをこぼしていると、ちょうどいいところで相づちを打ち、一緒に顔をしかめてくれる。そしていつだって、自分の直感を信じるといい、と言ってくれる。そんな人は彼以外にいなかった。
「辞めたほうがいい」
ある晩、高校時代の友だち、マディとリリーに会っていた。ゴールドマンに対するふたりの見解ははっきりしていた。 「辞めたほうがいい」シャルドネのグラスを私に手渡しながらマディが言った。彼女が手首につけているブレスレットがジャランと鳴る。「人生は短いんだから、不幸になってる暇はないよ。クオリティ・オブ・ライフを考えな。やりたいことをやって、夢を追いかけるべきだよ」 マディは通勤に1時間もかけるのが嫌で、ちょうど転職したところだった。片道30分の時間を取り戻すために、収入が減るほうを選んだのだ。私には彼女の決断は理解できない。時間のために収入を犠牲にするとは、なんとのんきなのだろう。マディも裕福な家の出ではない。私と同じように貧しい家で育ってきたし、そう多く稼いでいたわけでもないのに。彼女の両親はどう思っただろう。うちの家族なら“クオリティ・オブ・ライフ”や“夢を追いかける”などという言葉は、まず使わない。